台湾ちんほうちゃ日記

~ガイドブックにない無目的が目的の究極のひまつぶし~

南方すれちがい文庫

 ヒマヒマヒマヒマで、体じゅうの末端がへなへなとマヒしそうなくらいにおそろしくヒマだったので、とりあえず宿泊先の高雄からひとりで行って戻ってこられる程度で、夕暮れどきの神聖な酒のみほろ酔い黄金時間を侵食させないことを条件に、高雄駅から屏東線に乗って潮州駅まで行ったらあとは折り返して適当に寄り道して帰る、といういたってシンプルな日帰り観光ルートを、このうすら気泡コンクリ頭でやはり突貫工事的にかんがえた。

 そんなわけで、潮州駅を発って最初に竹田駅に下車したのは、なんといっても潮州駅のとなり駅だったことと、日没までにまだゆうに時間があったことと、そしてなによりも「いちおう歴史のある駅なんだからまあなんでもいいからとりあえず行ってみろよ」という台湾友からのおおらかで寛大な意見に端を発するのものであった。

 ホームからのびる長い階段を下り改札を抜けたところで作業服姿のオジサンに「出口はこっちよ」と声をかけられた。掘りかえされた地面の上の板渡しをミシミシ音をたてて進んでいったら、木造の小さな校舎裏のようなところにでて、その小さな入口を抜けるとやはり小さな正面があって站車田竹とかいてあった。じゃなかった竹田車站だった。

 駅前に案内板が立っているのを横目に認めながらも、日陰をもとめて、近くの樹木だまりみたいな場所に向かった。そこはよくある駅前公園で、古めかしい木造の便所が建っていた。それはなかなか懐かしくて趣のある建造物だったから、せっかくなのでここで用を足しておこうと一歩足を踏み入れたところで間違いに気がついた。それは昔の浴場を当時のままに保存しているといった歴史ある風呂跡だった。こうした昔の思い出が竹田驛園にいくつか残されているようだ。

 駅に背中を向けて石造りの道を歩いていくと車の走る道路にぶつかる。そこで最初に目につくのが泰美親子図書館というこの辺りではひときわ近代的にみえる建物だった。しかし大きい建物といったらそれくらいで、あとはちょっとしたビンロウ屋があるのと、道路のわきの南国の木々がずっと先まで茂っているくらいだった。

 さっき駅前でみかけた案内板に戻ってから、こんどはその近くにある李秀雲紀念館へ歩いた。館内は昔の農村の写真や古い農耕具なんかが展示されて、あとは何本かの竹が掛け軸とともに小奇麗に装飾されていた。当時を知らない僕にとっては、当時の素朴な空気を味わえるところだった。
 
 外にでたら雨が降っていた。そろそろ次の列車が来てもいい頃だったこともあって、僕はもと来た木造の駅を抜けてホームに駆け上がった。雨をさえぎる屋根からちょうどはみださないあたりで、列車がくるまでのあいだFACEBOOKをながめている。さっき投稿した竹田車站の写真に友だちからのコメントがついていた。「ここは日本語図書館があるよ」と。コメントはさらにつづいて「池上一郎という日本人が竹田に本を贈ったから池上一郎博士文庫になった」「日本語の図書館としては最南端にある日本語図書館だ」というふうに、なんだか興味深い文章が展開されていた。

 そんなどこか懐かしい空気をふくんだいかにも日本と台湾のココロアタタマルエピソードをこんなどたん場で発見しておきながらも、乗りこんだ車両の扉は閉まりはじめ、いまからちょうど30分前、竹田駅に下車したときとまったく寸分のくるいもなく、列車は高雄に向けて機械的にうごきだした。

 今回のすれちがいもまた、結局のところ、このコンクリ頭が描くシナリオとしては、もっとも理想にちかいカタチでの旅の1ページにちがいなかった。

***屏東線の竹田駅***


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熊のマークの豚足店

2012/6/22 屏東

 高雄から墾丁に向かう車の窓にはが途切れることなく続いている。その反対側、右手の窓の向こうはが広がっている。山の上には霧のような雲がいくつにも重なり、海は河から流れ込んだ土砂で茶色く濁っていた。

 ほんの数日前、私たちの台湾行きに合わせるように2つの台風の襲来が予想されていた。インターネットのウェザーニュースは連日のように台風の接近を呼びかけ、facebookの友人のコメントには台湾旅行への懸念の意見が多く寄せられていた。特に南部の、高雄から墾丁にかけては致命的ともいえる進路が描かれ、南東の海から台湾海峡を抜ける台風の動きは、最後まで変わることのないまま、出発日を迎えた。

 幸いにも、今ここにいる。台風は空港に触れることなく、島をかすめるように進むと、そのまま温帯低気圧になった。友人が運転する車には私を含めて四人が乗車している。台湾人の友人が二人、日本人の友人が一人であった。窓の外には台風の足跡が生々しく残っていたが、友人からもらった あたなたちとてもラッキーね のひと言がとてもありがたいものに感じられ、これからの旅を、隅から隅まで感謝の気持ちで過ごそうと、心の中で思っていた。

 国道沿いの熊家萬巒猪脚という食堂で車を停めた。萬巒(ばんらん)というのは屏東県に属する郷の名前で、その名物料理に豚足がある。熊のマークの扉をくぐると甘いような独特な匂いが鼻に入った。あとで調べたら匂いの元は八角という香辛料であることが分かった。八角はもはや台湾の匂いとまで言われるほど、街のあちらこちらで香ばしい匂いを発している。この匂いをかぐと、私はいつでも ただいま という気分で、台湾旅行のはじまりを予感するのである。

 注文はメニュー用紙に鉛筆で記入する方式だった。友人は慣れた手つきで、数多くの品目の中からいくつか選んで、料理名の横の空欄に、サクサクと数字を書き込んでいった。テーブルの真上でプロペラが回転していて、時折、気持ちいい風を吹き付ける。広い店内では食器のぶつかり合う音が響き渡っている。

 しばらくすると切り刻まれた豚足がお皿に山盛りになって運ばれてきた。ニンニクが漬かる醤油ダレに少しだけ浸してから、ぱくりとひと口食べてみる。柔らかなゼラチン質のがぬるりと落ちると、なかからムチムチした肉が歯にあたって、うまみたっぷりの脂がじゅわっとふき出した。煮汁の濃厚な味が肉の中まで染み込んでいながら、しつこくない。どちらかといえばやさしい味付けだ。さらに豚足特有のくさみはまったくというほどない。

 と、と、が、自由に絡み合ってできた世界は、自分は今まさに肉を食べている、というリアルなヨロコビを表現する。八角や、おそらく何十種類もの漢方エキスで煮込んだコラーゲンは、つややかな光を発しながらも、うまみのエネルギーをいっぱいにため込んでいて、それを壊すたびに、ため込んだうまみの塊を惜しげもなく放出してくる。夜であればきっとビールが足りないに違いがないんだろうけれど、今はお昼なので、ご飯がどれだけあっても足りないように思えてきて仕方がなかった。

 たらふく食べたあとトイレに立った。表の通路の日かげで、白いタイワンイヌが眠っていた。近寄っても目を開けない。すやすやと寝息まで立てている。いくらなんでも無防備すぎなんじゃないかと思えるくらい安らかな顔をしている。それを見ていると、なんだかこちらも安心してくるのであった。腹いっぱいになった満足感と充実感で、自分も友人の車で眠ってしまいそうだ。

 店の外に出るとメガネが一気にくもった。台風が運んだ真夏の日差しが、猛烈な熱気で歓迎している。国道から乗り入れた大型の観光バスと入れ違うようにして、車は再び墾丁に向かって走り出した。


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冷熱冰を求めて

2013年8月17日 屏東

高雄から台鐵に乗って30分を過ぎるころ駅に到着した。

列車の冷房で冷え切った体を潮州の熱風が容赦なく溶かしにかかる。

ここは台湾南部の屏東市。目的はかき氷だった。

なんでもここのかき氷は、氷の具が熱いという話だった。熱いというのは例えで、食べる頃は氷に溶けて温かい。

駅の売店のお姉さんにかき氷が食べられるお店の場所を尋ねたら簡単な地図を書いてくれた。

お礼を言い地図に記してある道を進んだ。

8月正午の屏東である。日陰をつくれない低い建物がまばらに続いている。

犬が死にそうな顔してよだれを垂らしている。人通りは少ない。

そして目的地には一向に着かない。

着かないどころか目印に教えてもらったケンタッキーフライドチキンがいつまで経っても現れない。

まして見渡す限りの田舎の民家である。そんなハイカラな商業施設があるほうが不自然だ。

私はまったく違う方向に歩いていた。

ぐるぐると周り回った後、ようやく元来た駅に戻り、今度は駅を通過して先とは反対の方面に向かって歩いた。

汗はとうに枯れている。ペットボトルの水も底をついた。

民家の軒先で、兄ちゃんと家族とおもしき人が会話しているのが見えた。

これ以上灼熱の太陽に耐える自信はなかった。そのうえ方向が正しいかどうかも分からなかった。

思い切って尋ねてみることにした。

言葉の分からない私はガイドブックのかき氷の写真を指さした。

兄ちゃんは  おおっ  とすぐに事の状況を理解し、向こうだと方角を示した指を、そのまま隣にあったバイクの後ろ座席に移した。



            乗りなっ



甘いシロップに溶け崩れる氷の下から、作りたての白玉、湯圓、紅豆、小豆、芋が次々に現れてくる。

もちもち歯ごたえの隙間から半溶けの氷水が丸い甘みをのせて喉を滴り落ちる。

不釣り合いに見えるこの組み合わせが、絶妙なバランスを以て一つの食べ物を完成していた。

今までに経験したことのない違和感が、斬新さが、爽快感が、水分を出し切った身体の全体にしみ渡っていくのを感じた。

くたびれた身体に生きる元気をくれたかき氷の温もりは、見知らぬ外国人をバイクで助けてくれた、あの気のいい兄ちゃんの笑顔と重なったんだよなあ。



冷熱氷



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南廻線の車窓から

2012年7月9日 屏東

高雄台東を結ぶ台鐵、屏東線~南廻線の車窓には、大自然が作り出す珠玉の絵画が広がっている。

私の隣に座る窓側の少年が、スマートフォンのカメラを構える私に気が付いたのか。

閉めていた日除けのカーテンを全開にしたのだ。

少年とは顔を合わせることなく、会話をすることもない。

そんな無言の交流が最後まで続いていた。

大きな窓ガラスに映る台湾の自然はとても美しかった。

それよりも、日本と台湾の、国を超えた心の交流に、何にも代え難い絆の美しさを覚えたんだなあ。


南廻線の車窓から



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プロフィールです。

みのりおん

Author:みのりおん
台湾はちんほうちゃな食べ物であふれている。でもそこで出会ったのは、食べ物ばかりでなく、美しいシゼン、よく眠るイヌ、そしてとても優しいヒトビトだった。そのどれもが、明るくて、のんきで、楽しくて。そんな「ちんほうちゃ」な出来事を、とりためた写真の隅っこから、いつもニヤニヤしながら切り取っているんです。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味です。
※本ブログの登場人物は基本的にすべて仮名を使用させていただいております。

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