台湾ちんほうちゃ日記

~ガイドブックにない無目的が目的の究極のひまつぶし~

泰雅酔酔録

 天送埤を出た車は10分も経たないうちに田媽媽泰雅風味館という看板の料理店の駐車場に停まった。ここがミツル君の言っていたお父さんの友達が経営しているお店なんだな。

 中に入るもののお客さんは一人もいない。すると奥から日に焼けたいかにも腕っ節の強そうなおとっつあんが現れた。おとっつあんは僕らを入口ちかくのテーブルに座らせるとガッハッハと威勢よく笑いミツル君のお父さんに何か言った。

 ミツル君の翻訳によると今日はお店が休みで食べ物はないということだった。それでもまあお茶でもという話の流れなのか、店内に陳列されていた刺葱蚕捲の袋がさっそうと封切られた。

 その袋の表面には「新鮮なたまごと小麦粉揉は合ってなります、食感は柔らかくて脆くて厚くて充実しています。見るだけでよだれが出てくる」と日本語の説明がしてあった。

 蚕捲というロール状の玉子菓子をザクっと噛んでみたらクッキーの破片がポロポロと舌に落ちて唾液を吸い取り始めた。それに呼応する形で、なるほど、唾液腺からよだれがあふれ出てくる。クッキーと葱の組み合わせがまたよい。

 続いてパック入りの茶色いゆで卵と黄色い透きとおった漬物みたいなものが出てきた。「ゆで卵はお茶で味付した茶香燻製蛋で、黄色いのは青木瓜というパパイヤの漬物なんだよ」と、ミツル君はすかさず説明を入れる。

 それからおとっつぁんの奥さんと思われる人が、なんと、料理がのった皿やら鍋やらを次から次へとテーブルに運んでくるではないか。それはお店で注文する料理というよりは、家庭料理、といった風情で、どこか心地のいい温もりがあった。

 おとっつあんはビールケースをドスンと足元に置くと、ビンの栓を勢いよく抜いた。「おう、ニホンジン!カンパイだ!ガッハッハ!」突如おとっつあんの口から日本語が出た。

 「ノメノメ!コンニチハ!ガッハッハ!」そう言って、僕の目の前に置かれたコップにガバガバと台湾ビールが注がれた。さらにミツル君のお父さんのコップにも注いで、おとっつぁんのコップにもなみなみと注がれた。

 ビールは体積が減るそばから断続的に補充された。泡がこぼれそうになるので、僕はシエシエシエシエと言っては口を受け皿がわりに吸い取るが、すぐにまた次の泡がこぼれそうなほどに満たされる。

 おとっつあんは台湾原住民の泰雅族(タイヤル族)と言った。その飲みっぷりは僕なんかから見たら戦闘民族そのもので、やがて酔いがまわりはじめると、はるか宜蘭の奥までやって来た旅行者特有の観察眼はたわいなく崩壊し、カメラは宙に舞い、空きビンが倒れた。

 いつの間にか難しい漢字のラベルの貼られた無色透明なけっこうヤバそうな酒も並んであって、そんな酒や料理たちが目の前で脈略なく近くになったり遠くになったり、何もかもが笑っているみたいに見えてきたようだ、、、そんで、、なんだか、よっぱらってしまったようじゃあないあ、、、◎、。☆。×〇。。、××

***宜蘭泰雅村の田媽媽泰雅風味館***

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レールの先は天送埤

 宜蘭駅を離れた車は田園が開けた道にはいった。遠くには山々が緑濃く連なって、台風が過ぎたばかりの空にはところどころに黒い雲が渦巻いていた。暗い外の景色とは一転して、車内はいつも明るかった。

 車はミツル君のお父さんが運転して、助手席にはミツル君のおとうと君と後ろの席にミツル君のお姉さんとミツル君と僕が座った。今日のこと、ミツル君と約束していたわけではなかったんだけれど、いったいどういう風の吹き回しか、はたまた台風によるいたずらか、いつの間にか僕はミツル君一家の車に乗っていた。

 ミツル君はメガネの奥の目を漫画みたいにキラキラさせながら「えーと、結婚するにワタシのお姉さんはどうかなあ?」と、いかにも冗談っぽく、しかし実に興味深そうに聞いてきた。僕は「結婚したいから是非そうしてくれ!」と答えた。

 そんな話の内容が聞こえたか聞こえなかったか、ミツル君のお姉さんは少しはにかんだ様子で顔を背けると肩をひくひくと小刻みにゆらした。本気と思われたのかどうかは結局のところ分からなかった。

 途中から、車は山に沿って走り、泰雅大橋に乗った。橋の上は、街灯が左右からアーチ状に湾曲していて、まるで透明なトンネルのように向こうの岸まで渡っていた。

 宜蘭駅を出てから40分くらい経ったところで車は停まった。近くに木造の青い建物があった。

 「えーと、これは日本時代に建てられた駅で今はもう使われていないんだ!」
 ミツル君は力を込めるように言った。
 「えーと、ワタシたちは前にも竹林駅に行ったことがあったね?ね?あの駅からこの駅まで続いているんだ!」
 「竹林駅かい?そんなの僕はプーツータオ(知らない)だ」
 「えーと、何言っているんだあ。ワタシが前に案内したじゃないかあ」

 以前に、ミツル君に羅東竹林駅というところに連れてきてもらった。太平山からヒノキを運ぶために造られたという森林鉄道で、宜蘭は今でも森林鉄道の旧駅舎が残っているのだ。

 青い駅舎のなかにはいると青い天井の壁に昔の時刻表が掛かっていた。太平山森林鐵路各站列車時刻表には、羅東から始まって、竹林三星天送埤清水湖牛鬥楽水ときて、最後に土場で終わる站名(駅名)が書いてあった。終点から始点を引き算すると、その間ざっと1時間半であった。

 ここは、路線のほぼ中間にある三星郷天送埤車站(天送埤駅)で、1924年に建設された。ミツル君の話によると、廃線となる1979年まで、土場駅と貯木地のある竹林駅との間で、伐採された木々の運搬が行われていたということであった。

 駅舎のなかは、時刻表の他に当時の家具やポスター、そしてだいぶ古くていかつい金庫があった。

 「ミツル君、この金庫のなか開けたら台湾元がいっぱい入っていたりするのかい?」
 「ははは、何言っているんだあ。もう入っているわけないじゃないかあ」

 あたりに民家が点々とする静かで閑散とした道路には、かつてのレールがひっそりと埋め込まれていて、それはどこか分からないところにまで続いていた。

***宜蘭三星郷の天送埤で***



レールの上は天送埤




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ターワンからの警告

 たとえば、高雄に来ているときは高雄がいちばんだと言い、宜蘭に来ているときは宜蘭がいちばんだと言う。

 そんなわけで、やっぱり宜蘭がいちばんだ!と昨日から宜蘭に来ていてそう思った。居心地はいいし飯もうまいし人もいい。まあ、はやい話がきまぐれなんだ。

 昨日あそびにきてくれた宜蘭のフミオ君に、駅ちかくの牛肉麺のお店をおしえてもらったので昼になって来てみた。

 その大成羊排麵・牛肉麵という飯屋は、なんでも羊肉を煮込んだ羊排麺という麺がイチオシだということだ。

 店の場所はすぐにわかった。宜蘭の街はわかりやすく歩きやすく、旅行者として滞在するにはとりわけ快適なところで、特にあまりわかっていない自分のような無頓着ニンゲンでも、わりとカンタンに目的地をみつけられたりする。

 腹も減っていたので、その羊排麺を、大盛り大碗(ターワン)で注文した。

 羊の肉はけっこう味が濃い。麺がちょうどご飯代わりになる。だから肉と麺を交互に食べる。モチみたいな麺は噛んでも噛んでもモチモチしていて腹もちもよさそうだ。

 シャツにはねつける汁玉のことなんて気にしない。八角の香りが染み込んだスープを、肉と麺の残りといっしょにズビズビズビリと飲みこんだ。いやあ、けっこう食った。もうおなかいっぱい。げほっ。

 イスの背にもたれてふくれた腹をさすっているところ、こんどは宜蘭のミツル君からメッセージがはいった。これからいっしょに泰雅族の村にいって飯を食おうというものだ。

 僕はこのあとで何をする予定もなくて暇だったので「おうおう、行く行く!」と即決した。あれれ、しまった。いまさっき大盛り麺を食ったばかりじゃあないのか。げぷ。

 かくして、ミツル君と宜蘭駅で待ち合わせをすることになった。ここから決してとおくないところだったけれど、駅まで歩いて、すこしでも腹を減らそうとかんがえた。

 泰雅はタイヤルとよんで、台湾の原住民だからおそらく日本人みたいに酒飲みだ。これからいったいどうなるかわからない。できるかぎり腹の中身を消化していかないとこれはたいへんなことになりそうだ。

 レンガ造りの宜蘭駅舎の前はちょっとした広場になっていて、花壇や木のベンチが、厚い雲の隙間からこぼれおちる午後の光にうっすらと照らされていた。今日は土曜日のためか、利用客は比較的すくないようで、のんびりとした時間がながれていた。

 ミツル君は駅まで車でむかえに来てくれることになっている。僕はベンチのはしっこに腰をおろして、ミツル君からのメッセージがはいるのを待っていた。そして、麺を大盛りにしたことをすこしだけ後悔していた。
***大成羊排麵から宜蘭駅へ***

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ヒノキの森と低気圧

 宜蘭の友だちのミツル君の車に乗って羅東林業文化園區まできた。羅東駅からも歩いて10分かからないというから電車でもこられる場所だ。羅東駅宜蘭駅から3駅はなれたところにあるからそんなに遠くもない。

 僕はミツル君に「僕にとってはじめての宜蘭なのに宜蘭で遊ぶんじゃなくていきなり羅東ってちょっとさみしいじゃないか」と言ったら、ミツル君は「ぼくの実家なんだからしかたがないじゃないか、でもぼくの故郷だからこそキミに案内してあげたいんだよ」と、父親の車を借りてくるほどの張りきりようだった。

 僕はガイドブックにあまり紹介されないような派手じゃない場所がけっこう好きだったりするので、実のところ、そうした場所に行けるということがけっこううれしかったりしていた。

 雨は小雨ていどのものだったけれど、降ったりやんだりを繰り返して、傘がいるのかいらないのかわからない、ふりかけみたいな空だった。だけどはなっから僕は濡れちゃこまるような柄でも性格でもないのでさして気にもならない。

 園内にはいると古めかしい木造の日本風の駅舎が建っていて、すぐちかくの枕木のうえには丸太を積んだ蒸気機関車が乗っかっていた。「ここはむかし竹林駅だったところで森林鉄道が走っていたんだよ」と、ミツル君はいささか控えめにしかし得意げに言った。かつて、台湾の北東にある太平山から木を切りたおしては鉄道にのせてこの竹林駅まで運んでいた、ということであった。

 見わたしてみると、このひろい敷地のまんなかには貯木池というこれまたひときわおおきな池があって大量の木がぷかぷかと漂流していたから、これは太平山から運んできた木材を保管しておくためにつくられた池だということもわかってきた。

 付近にはやはりなんだかむかしの日本の建築様式をおもわせる森産館森活館森動館といった、やたら森づくしな名前の建物があって、その内部は自由に見学できるんだという。

 僕たちはそのうちの森産館に靴を脱いであがった。玄関のちかくに切り株で台湾島を形づくったモニュメントがあって、同時にツンとした木の濃厚なにおいが鼻をついた。ヒノキだ。そうすると山から運んできたという木も池に浮かんでいた木もさっきの駅舎もヒノキということになるんだろうな。

 ついでに森活館ものぞいてみた。靴を脱ぐ度に僕は「ウランティレボウ」という最近おぼえたての台湾語をつかってみた。それは「ごめんください」という意味の言葉で、実際になかのひとに通じたかどうかわからなかったけれども、それをみたミツル君は、すこしはずかしそうに、照れたわらいを浮かべていた。

 森活館にはむかしの小道具らしきものがたくさん展示されているようで、畳の部屋にはなつかしい黒電話があったり、年代もののストーブのうえには今にも沸騰しそうな旧式の丸いやかんが乗っかったりしていた。

 ミツル君は僕よりもひとまわり年下だったので、僕は「ミツル君はこの時代を知っているかい?」とエラそうに聞いてみた。ミツル君は「哈哈哈~」とあいまいな返事をした。

 雨もやんだので、僕たちは貯木池のまわりを歩いた。水のざわめきにまじって、ちかくの木陰から野鳥が飛びたつ音と、チチチと鳴く声が聞こえて、5月のおわりといえども、地上からむらむらとよじのぼってくる蒸気は、けっこうそれなりに暑かった。

***羅東ヒノキの森公園***

ヒノキの森と低気圧




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さまよえる前進

 遠くにゆるやかにうねる山々や、みどり豊かな田園の風景を走る車のなかで、ハンドルを握る張さんへの疑問が、ほとんど無思考な頭の隅にぐったりとくっついたまま離れないでいた。その疑問というのは、張さんには何か別のところに本当の目的があるのではないか、といった疑惑や懐疑に近いものであった。
 
 張さんは私が泊まっているビジネスホテルに勤務している。もちろんホテルに観光ガイドというサービスも、またそれを目的に宿泊する客もいない。しかしこうして、一介の通りすがりのひとり旅行者に過ぎない私を、自分の車に乗せて、宜蘭の観光地、とりわけ風光明媚でいわゆる隠れた観光地といったようなところに案内している、という展開になっている。
 
 純粋に旅行客を楽しませてやりたいというただの親切心からきているものなのか、後になって宿泊費とは別に高額なサービス料をせしめようとしているのか、また何やらただならぬ自身の趣味嗜好の餌食に引きずり込もうとしているのか、どちらなのかも分からなかった。

 車は、ここが勝手知ったる土地であるかのように、さらに森の奥へ、かろやかに、そしてこきざみにずんずんと進んで行った。
 
 お互い言葉が通じないことが分かっているせいか、どちらからも声は上がらなかった。私は、ときおり窓の外を眺めては、ガイドブックの地図に目を落としたりしていた。

 道はいつの間にかアスファルトから砂利の道に変わっていた。両脇に背の高い尖った草が壁のように迫っているなかを、カーブを描くように道なりに進んでいくと、いきなり空がぽっかりと口をあけて、ひときわ広い車だまりの場所にでた。車は一台もなく、張さんは駐車スペースの真ん中あたりに車を停めた。

 そこは、まだ少し朝露にけむる湖が広がっていた。

 夏の朝の清々とした空の下に、ジグザクのような機械的な形状をした赤い橋が架かっているのが見えた。ときおり天空のそれと呼応するようにして、水面をころがるように小さな風のかたまりが走っている。森の茂みの向こうからは、野鳥の高い澄んだ声が聞こえてくる。

 湖を囲む歩道の至るところで倒木が立ちふさがっていた。一昨日の台風の置き土産だ。湖面の近くの岸からゴボゴボとものすごい濁音をあげて、たくさんの泡を含んだ水が木の歩道の一部を持ち上げるように噴き出しているところがあった。「しゃおしん(小心)」と私の先を歩く張さんから気をつけるようにと声がかけられた。

 湖のほとりはちょっとした広場になっていて、瓦屋根の下に望龍亭と書いた木札を垂らした小さな円形状の休憩所があった。私は張さんに促されるようにしてベンチに腰かけた。

 張さんはどこから買ってきたのか、ビニール袋のなかから二人分のサンドイッチと豆乳を取り出して、その一人分を私の座っているベンチの近くに置いた。そして片言の英語で「ここは宜蘭のなかで私のお気に入りの場所なんだ」と言った。FACEBOOKのチェックイン機能で位置情報をサーチすると、宜蘭望龍碑の地名が検出された。それは員山鄉の枕山村にある。スマートフォンの表示画面を張さんに向けると、張さんは静かに頷いた。張さんの表情の真ん中には、屈託のない笑顔があった。

 水辺のあたりに、少し茶色がかった体毛のガチョウが何羽かあつまって、グワッグワッとくちばしで羽づくろいをしているのが見えた。
 
***宜蘭~清々しい早朝の湖で***

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プロフィールです。

みのりおん

Author:みのりおん
台湾はちんほうちゃな食べ物であふれている。でもそこで出会ったのは、食べ物ばかりでなく、美しいシゼン、よく眠るイヌ、そしてとても優しいヒトビトだった。そのどれもが、明るくて、のんきで、楽しくて。そんな「ちんほうちゃ」な出来事を、とりためた写真の隅っこから、いつもニヤニヤしながら切り取っているんです。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味です。
※本ブログの登場人物は基本的にすべて仮名を使用させていただいております。

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