台湾ちんほうちゃ日記

~ガイドブックにない無目的が目的の究極のひまつぶし~

いばりんぼうとたいわん人

 台湾がすきで一年もしないうちに4へんも来た。なかでも高雄がすきで高雄は今日で3べんめだ。高雄の友だちに「それではいくらなんでも来すぎだ」っていわれたけどすきなんだからしかたがない。

 高雄にはぼくを知っている友だちがたくさんいて、会うと「よく来た」といわれるのでうれしいが、「どうして来ることをもっとはやく知らせないのだ」といわれるとぼくはなんと答えていいかわからない。

 ぼくはあらかじめ友だちと会う約束をしないので、いばっていると思われているかもしれないが、迷惑をかけるからだまっているだけで、あとからみんなに会えると、ほんとうにありがたいと思っている。いばっているようにみえても、心のなかはうれしいんだ。

 友だちの車にのって高雄から旗山に来てみたら、旗山はどうにも灰色がかって古っぽく、ほこりやしみが建物にも屋根にも壁にもしみついてみえて、「どうして旗山は高雄よりも古っぽいのかな」と友だちに聞いたら、「旗山も高雄だからおなじ高雄でくらべるのはおかしいけど、旗山はむかしサトウキビバナナをたくさんつくっていたところで、いまもむかしの街がのこっているから古いんだ」と教えてくれた。

 ヨーロッパみたいなレンガ造りの建物のなかにも、うすい青いろをした木の家が一けんあって、よくみたら駅だったから、電車がはしっているのかと思ったら、むかしの写真とちかくの案内とパンフレットがつまれてあるだけだったので、友だちは「ここはむかしの旗山駅で、そのころは鉄道があってサトウキビもバナナも人もまいにちたくさんはこんでいたけど、いまはもうないんだ」といった。

 5月は春だからまだあったかいと思っていたけど、暑くてならない。暑いあたまでぼーっと歩いているとすぐ近くで走っている車とバイクにひかれそうになるのでこわいから、友だちの背中に腹をくっつけて歩いた。
 
 それでも旗山老街はおもしろいところで、街を歩いていたら散歩している犬がウンコしている絵と「摸良心。想看嘜」とむずかしい字をかいた看板があったので、「あれはなにかな」と聞くと、「あれは台湾語で、犬のウンコは飼い主が持って帰れってことを遠まわしでいっているんだ」と教えてくれたから、台湾では「ダメ」とはっきりおこらなくてもいいということだから、大人がおおいんだな。

 やっぱり暑すぎてどうにかなりたいと思っていたらアイス屋の看板があって、つめたそうだなとみていると、ぼくが食べたい思っていると思ったのか、友だちは「食べよう」といってみんなお店に入っていった。入口には枝仔冰城とかいてあってぼくにはやっぱりむずかしい字だったから店の名前はさいごまでわからなかった。

 一つのテーブルにみんなで車座になってすわっているとアイスクリームがでてきて、クリームのまるい部分にバナナがささっていた。「旗山はバナナの名産地だよ」と友だちがいうので、そうか台湾バナナはここにあったんだなとわかってすこしうれしい気分になった。

 ぼくはまえに朝ごはんにバナナを食べているときがあって、台湾バナナは高いから食べないので、いつもほかの安いバナナを食べていたから、きょう台湾バナナを食べてみて、いつも食べている安いバナナよりもあまくてうまかった。

 ぼくはみんなともっと話したかったから、カバンから台湾語と日本語の会話帳をだしたら、パスポートもいっしょに落っこちたので、友だちがパスポートみせてというのでみせたら、台湾のスタンプばかりだったので、みんな笑った。

 台湾の友だちは、日本人はぼくひとりしかいないのに、台湾人の友だちどうしで話すときもぼくにもわかるようにわざと日本語で話している。そんな台湾の人たちがすきで、台湾がすきになったから、ぼくはなんべんでも台湾に来ているんです。

***高雄の旗山ぶらぶらり***



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  1. 高雄
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フンキコの弁当喰い

 午前中に阿里山から奮起湖へ移動した。嘉義県にある標高1403mの奮起湖は、ドーム型をした白い雲にすっぽりと覆われて、ちかくの山の木々の茂みからは濃厚な霧がモクモクと吹き降りていた。地上にいた時とくらべると肌に触れる空気がまったく違うものに変わっていてむしろ寒いくらいだった。そして湖はない。

 あたりには老街とよばれる古い町並みがひろがり、土産屋とそれを往来する人びとでひしめきあっていた。路上にまだ泥がついたままの生わさびがそのままの姿で売られていたりする。そんなにぎやかな老街を通り過ぎて小道の脇の階段を降りる途中にある1軒の飯屋にはいった。

 阿良鐵支路便當という店の品書きにはいくつかの食べ物の名前がならんでいたが、そのどれもは弁当のようだった。なかでもほどよい色合いをした120元の紅糟排骨便當を注文することにした。

 店内はけっして広いほうではなかったが、みんなが相席で座るテーブルはどこもかしこも満席で、弁当を待っているあいだにも、空いたテーブルからすぐに人でふさがっていった。奮起湖は奮起湖駅があるから、ここでは駅弁ということになる。それであっても、はるばる列車に乗ってさびしい旅情ただよわせる腹をすかせた乗客が通りすがりついでに駅弁を、といった風情はなく、ここに弁当を食べに来ることを本来の目的としているような雰囲気が、人びとの観光然とした風体からしっかりただよってきているようだった。

 いたいけない四角に色とりどり食材がぎっしりと詰め込まれた弁当は、お互いがケンカをするでもなく、あるいは無理やりに主張するでもなく、それぞれが相手を尊重しあい、調和し、自分の役割を自分の領分のなかでうまく果たしているようにみえて、なんだかうれしいものがあった。だから、白い飯のうえには、いくつかの肉切れと、付け合わせの野菜がのっかっているだけでもう充分だった。

 阿里山烏龍茶で骨まで煮込んだ鶏もも肉と、香辛料の効いた揚げたて骨付き豚と、地元でつくった採りたて野菜と、米どころの台東のを、噛むところは噛んで、あとは飲み込んだ。

 「たりなひ」

 「足りなひ」のである。すっかりすべてを平らげしまってからの印象は正直に「足りない」というただその一言だったのである。

 台湾にいるときの胃袋は常になにかしらの有機物が詰めこまれている状態で過ごしていることがおおく、東京にいるよりも空腹の時間が極端にすくない傾向にあるのだが、足りないものはたりなひのである。

 いっしょに食べていた向かいの友人は、そんな刹那的な所業の一部始終を観察して「おおいっ」と目をまるくして、食べかけの鶏もも肉をテーブルの上に落とした。自分はというと、少しぬるめに落ちついたタケノコスープをズビビと飲み干し、使いおわった割り箸をバキリとへし折り、弁当箱にいれると、ふたをして、輪ゴムでパンして、これでおしまい。

***お昼どきの奮起湖で***


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  1. 嘉義
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海までついでに切り取って

 福康大飯店で借りた自転車の、やや左に傾きかけたハンドルさばきも、自分で言うのもヘンだけど、なかなかイイ感じに様になっている。ほんの気まぐれついでに、鯉魚山のてっぺんから見た海をめざして、自転車は、ふもとから続くサイクリングロードを、風をきって、すいすいと走った。

 自転車と平行するように線路がとなりに走りだして、だんだんだんだんとプラットホームが盛り上がってきた。ホームに立っている台東とかいた駅名標のすぐ後ろに、グレーと黄色の短い車両がうすい日差しにキラリと光った。今は使われなくなった旧台東駅舎にも、むかしは、列車に乗る人と列車から降りる人が同じ数だけあって、せわしなく入れ替わる人びとを背に、列車は、時刻表をまもりながらもけたたましく日々往来していた、というような風景だった。

 上半身に受ける遅い午後の風は、いつでもシャツのまわりの熱をかき消して、くび元からすそに向かってパタパタと流れていった。その風のなかに、ちょっとずつだけど、潮の気配が混ざりはじめていた。そして、空が大きくひらかれ、迎曙之濱と朱色で掘りぬかれた道標のその向こう側に、でっかい海が、ワッハッハと大笑いするかのようないでたちで、遠く、遠くに広がった。

 道の端に自転車をとめて、ところどころに流木がころがる砂浜に下りていった。近くで見る海は、茶色がかった砂混じりのうすい青色で、そのわずか自転車10台分くらい向こうの海は、連続する同じ海にもかかわらず、くっきりと濃い藍色に境界線を鋭く縁取られて深く沈んでいた。砂浜のうえでは、夕涼みをする人たちがポツリポツリとあいまいな間隔を空けて、静かに海を見ていた。泳ぐ人はだれもいない。

 道なりに車輪をゆっくり転がした。両脇にはやわらかな草原が快くなだらかに広がり、すわったり寝そべったりできるように、親しげに人を誘っている。ペダルをこぐのをやめ、自分の足の長さよりも高い位置にあるサドルに引きづられるように、つま先を地面にピンと突き立てて、思わず大きく深呼吸した。

 道の先のほうから、太って足の短い正体不明の動物が人を引っ張ってトコトコと歩いてくるのが見える。なんだなんだ、と思って近づいてくるのを待っていると、やがて、うすいブルーの帽子に黒とモモの色をした豚ちゃんが、ブヒブヒと鼻先を伸縮させて、うれしそうに草の匂いをかぎながらやって来た。豚ちゃんは、短いしっぽをクルリとまるめて、お姉さんの小麦色の腕にひかれて通り過ぎた。その短いしっぽ姿は、だんだんと小さくなっていった。
 
 そんな台東海濱公園の一角に、地面に斜めに突き刺さったフォトフレームがあった。天気のいい日はフレームの向こう側に緑島が見える、というけれど、今はうすくかかる雲の向こうにあるようだ。あたりは、西に沈みゆく夕日を受けて、黄金色へと移り変わろうとしていた。

 一日のなかで、人や風景が、もっとも美しくかがやく瞬間がある、ということを思い出した。あと少し経てば、それほど時間もかからないうちに、その瞬間は、きっと必ずあらわれるはずだった。そんな時があるのなら、いっそのこと、斜めに傾いたフォトフレームから、切り取ってみたい、と思いながら、ペダルに張りついているつま先は、やっぱり、森林公園に続くサイクリングロードを、西に向かってこぎだしていた。

***台東の海の見える公園で***


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  1. 台東
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こけらおとし

 改札をぬけるとまだやさしい夏の朝の太陽がまぶたいっぱいに急速にひろがった。陽光をあびたロータリーはまぶしくも広々と白ずみ、高層ビルにかかる巨大な看板はチラチラとゆるい光線をはねかえしていた。僕がおぼえている限りの一年前とかわらない台南がそこにあった。

 目の前のロータリーをさえぎる国道に沿って駅舎を背後に右手にまがる。自動車やバス、バイクがせわしなく行き交う道路に平行して歩道のうえをしばらく歩いていくと、唐突に、周辺とあきらかに雰囲気を異にする緑の一帯が、前方左手にあらわれた。ヤシ科と思われる樹木の先端が、空たかくにつきささっている。

 台南公園入口の樹木のあいだを歩き進むにつれて大通りの喧騒はしだいに薄れていった。それと入れ替わるようにして、拡声器からすこしひび割れたキャッチーな音楽が流れてくる。木漏れ日がところどころに落ちる地面をさらに進んでいくと、音楽はついにはっきりしたカタチになってあらわれた。音楽の周りに人びとが集まって、陽気なテンポにあわせて、飛んだり跳ねたり両手を開いたり閉じたり上下左右にゆらゆら揺らめいたりして踊っている。あたりを見まわしてみると、小さな空地ごとに、太極拳やら体操やら、さらに僕みたいな素人にはわからない踊りをしていて、音源はひとつではないことがだんだんわかってきた。

 公園の中ほどまで来ると、小さな橋をながれる水の先に大きな池がひろがり、池の真ん中に赤の柱と金色の屋根の建物が浮かんでいるのが見えた。建物までは白い橋がジグザグに架かっている。そのままジグザグに橋を渡って建物に近づいて見あげると念慈亭と書いてあった。屋根の下は日陰になって、池からすべりこんでくる風が心地いい。近くのベンチで学生らしい若者たちが楽しそうにおしゃべりしていた。

 蝉が合唱する木陰の下に、石でできた四角いテーブルと同じく石でできたイスが空いていたので、腰をおろして、ガイドブックをペラペラと次の行き先を検討していたら、おばちゃんが話しながら三人やってきて僕のいるテーブルのイスに腰かけた。おばちゃんたちの話している言葉は巻き舌でなかったのでたぶん台湾語だ。相変わらずガイドブックのページをめくっていると、もうひとりおばちゃんがやってきた。かくしてこのテーブルは、僕から向かって左右のイスにひとりずつと、僕の正面のイスにふたりでかこむ結果となった。

 四人みんなで向かい合ったほうがさぞかし話もしやすいだろうと、そもそもこの場所でガイドブックなんか読んでいる必要も理由もない僕は、あくまで自然を装って、そおっとイスを立ちあがった。すぐにその動きに気がついたおばちゃんたちは、口々を一斉にそろえて、「あなたはいいの!ここに座っていなさい!」と、つきだした両腕を何度も振り下ろして、なにやら懸命に止めようしてくる。僕は、「大丈夫だ。問題ない。ボーブンテイ(台湾語で無問題)なんだ」と、いかにも大丈夫な顔をして、テーブルから離れた。おばちゃんたちは「ニホンジンか」とすこし笑い顔になり、しばらくどこかすまないというような寂しい顔をしていたが、会話はすぐに再開された。

 僕はふたたび当てもなく園内を歩きだした。すると横目に、歩道のわきに生えた木の梢のあたりから勢いよく地面に垂直に走り落ちてくるもがいた。それは一匹のこげ茶色のタイワンリスで、幹の周囲をクルクルとせわしなく転がりまわると、テープを巻き戻しするかのように、ふたたび木を垂直に素早く駆け登っていった。

 東京を離れて一晩が過ぎた。昨日まで頭のなかのほとんどを占めていた、いくつもの複雑な事象の片鱗が、ぽろぽろとはがれ落ちてきているような気持ちになった。木々の間からこぼれる太陽は、地面のうえでだんだんとその光力を強めていた。

***朝日のさしこむ台南公園で***


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  1. 台南
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プロフィールです。

みのりおん

Author:みのりおん
台湾はちんほうちゃな食べ物であふれている。でもそこで出会ったのは、食べ物ばかりでなく、美しいシゼン、よく眠るイヌ、そしてとても優しいヒトビトだった。そのどれもが、明るくて、のんきで、楽しくて。そんな「ちんほうちゃ」な出来事を、とりためた写真の隅っこから、いつもニヤニヤしながら切り取っているんです。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味です。
※本ブログの登場人物は基本的にすべて仮名を使用させていただいております。

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