台湾ちんほうちゃ日記

~ガイドブックにない無目的が目的の究極のひまつぶし~

さいころ型の優先事項

 よく外国に行くとカラダの成分や物事の考え方がそっちのものに入れ替わってしまうというけれど、台南に来て一晩明けてみたら、自分にもそんな兆候がじわじわと顕著に現れてきたようで、なんでも台湾人のブンちゃんが話す言葉がぜんぶ日本語に聞こえてきた。と思ってみたけれど、そもそもブンちゃんは日本語の先生でもちろん日本語はペラペラなので、結局のところどうもそれは僕の勘違いらしいということがわかった。

 そんなブンちゃんは、僕が台南を一人で旅行するといったら「不安すぎる」といって台北からわざわざ高鐵を乗り継いで台南まで駆けつけてきたんである。

 台南駅の東口のバス停で玉井行きのバスはどこから乗ればいいんだろうかとブンちゃんと案内板を眺めていたら、ベンチでバスを待っていた白シャツのおじさんが「あんたニホンジンか!ニホンジンか!」と立ち上がり「これからドコ行くんのデスカ?」と話しかけてきてなんかうれしそうだ。

 すぐちかくにいた買い物おばちゃんもこのやりとりを見て笑っていた。もうなんだかみんな楽しそうだ。僕は知っていた台湾語で「パイセイ」と言った。「パイセイ」はごめんなさいの意味だったけれど、どうしてこのときこの言葉がでたかわからない。でもここでいきなり台湾語がでたのでまわりにいた人たちはみんないっきにふきだして笑った。ブンちゃんも日本語でしゃべるし、あっちこっちから日本語がとびでてくるので、なんかもう外国じゃあない。

 10分もしないうちに僕らの乗る玉井行き興南客運のバスがやって来た。ブンちゃんと僕は119元の玉井行きチケットをにぎりしめ、ずっと後方の座席についた。台南の街をはなれて緑の多い道にはいると、バスはその車体を上下左右にうねりながらすっ飛ばして走った。路上の気まぐれで、ときおりドンっと尻が浮いたり、通路に転げ落ちそうになりながらも、使い古された赤ビニールの背もたれがなんとも夏仕様で肌に触れる感覚がひんやりと気持ちよかった。

 1時間くらいして玉井に着いた。ここまで来てしまうと夏休みに帰ってくる田舎の風景そのもので、からっぽの空に浮いた太陽が屈託のないギラギラ光線を無遠慮に首筋や背中に浴びせかけてくる。

 噴きでる汗をタオルでぬぐいながらすこし歩いて玉井果菜市場にはいると、人びとのざわめき声にまじって、あまくてちょっとすっぱい匂いがゆるい風に乗ってフワンフワンと鼻のまわりにトンできた。

 場内は、青色の軽トラックがゆっくり走って、荷台にはマンゴーが山のように積み重なっていた。さらに市場の中央には巨大な天井が広がり、果物のツーンとした匂いがより濃厚になって鼻の穴に侵入した。そして、大量のマンゴーや名前も知らない果物たちが僕たちをむかえた。

 マンゴー芒果というらしい。金煌玉文香水愛文と、そのどれもが色も形も大きさも違っていて、芒果といえどもいろんな種類があるみたいだ。同じものは同じものどうし籠にまとめられ、なかでも愛文というのが一番赤みがつよいのでもしかしたらこれが一番あまいんじゃあないだろうか。ダンボールの切れ端に1斤21元と書いてあり、ブンちゃんに聞いたら1斤は600グラムだというから、とりわけ高価な愛文でも、600グラム食べて100円で結構なお釣がくるということだった。

 籠ごと買ったとしても今ここで決して払えない金額じゃあない。ここはひとつオトナ買いでもしてやろうかとひそかに物色していたところ、ブンちゃんがあっちだあっちだと指差す先に、フードコートだろうか、飲食ができそうなテーブルが広がっているのが見えた。さらにそのテーブルの向こうにはカラフルな屋台風のお店がいくつも並んでいた。

 ちかづいて屋台のなかをぞいてみたら、さっきまで籠のなかに転がっていた芒果が、木のまな板のうえで、おもしろいほどの手際のよさと包丁さばきで、ざくざくとサイコロ型に切りつけられていた。だいだい色の果肉を目の当たりにするや、「イマスグコレクウ」、というのが、ブンちゃんと僕とで共通するたったひとつでもっとも重要な優先事項となった。

***台南の玉井果菜市場で***


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台湾はちんほうちゃな食べ物であふれている。でもそこで出会ったのは、食べ物ばかりでなく、美しいシゼン、よく眠るイヌ、そしてとても優しいヒトビトだった。そのどれもが、明るくて、のんきで、楽しくて。そんな「ちんほうちゃ」な出来事を、とりためた写真の隅っこから、いつもニヤニヤしながら切り取っているんです。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味です。
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