ピーマン

 墾丁から高雄にもどってきた。今日は朝はやくから台北から高雄に来て、そこから墾丁まで行ってきたもんだから、ただただ新幹線と車で自動運送されただけの空気体だったにもかかわらず、なんかもう疲れてしまった。

 高雄墾丁の往復5時間あまりをずっと運転しっぱなしだったコテイちゃんは、僕らとちがって疲れた顔ひとつ見せないまま、青年夜市の駐車場に車を停めた。

 「青年夜市だと!それじゃあきっと中年夜市とかもあってそれから少年夜市もあるんじゃん?」久々の地面の前に僕は思わず口にした。「ははは、無(ボー)ですよ。」コテイちゃんは正しい顔で言った。「ここは高雄市鳳山区ですよ。地元の高雄人ばかりですよ。」なるほど、そう言われてみれば、聞こえてくる言葉にクルクル舌巻き中国語とか、まして日本語なんてものは聞こえてこない。

 みんなが話しているのは、なんか強弱をゆるくした感じの、それでもって多種多様な音がフクザツに混じった言葉だった。コテイちゃんの説明によれば、これは台語(たいぎー)といって高雄人が普段つかっている言葉なんだそうだ。

 おびただしく張り巡らされたテントの下は、ゲームや衣料品、アクセサリーにおもちゃ、スマホグッズの店がびっしり入って、そしてやはりと言うべきか、食いもの飲みもの屋台の集団が、欲望のケムリをいたるところで拡散していた。

 僕らは基本的に晩飯を食べた後ということになっていたけれど、ペルオ君も僕もまだ臭豆腐鍋というものを食べたことがないことがバレてしまったようで、コテイちゃんに案内されるまま路上のテーブルを囲んだ。

 ぐつぐつと沸騰する麻辣臭豆腐鍋の中は、豚肉と内臓、そしてキャベツと唐辛子、それから臭い豆腐が入って、もうとにかく熱い。辛い。臭い。滝になって落ちる汗をゴリ押しして、僕らは「熱い。辛い。臭い。けどうまい!」と交互に叫びつつ臭豆腐鍋とタタカったんである。

 パンパンになった腹をさすりながら少し歩くと、テーブルに串モノを並べた屋台があった。ボールに好きな串を入れたらその場でさっと素揚げしてくれるんだそうだ。何を食べますかとコテイちゃんが聞くので、僕らはこれくらいならいけるだろうとピーマンを選んだ。

 ピーマンはいつも日本で食べるものより厚みがあってデカイ。ペルオ君と僕とで交互にピーマンをかじってみて驚いた。僕らが知っているはずのピーマンとはあきらかに違っているのだ。

 「うめーぞ、これ!」

 「なんだこれ、うめー!」

 おそらく日本の数倍おおきいピーマンは、その存在感も去ることながら、甘味も水分もみっちりもっちり充実して、やわらかい質感は、もうピーマンのそれじゃなかった。

 果たして日本の居酒屋あたりでこのようなピーマンを普段から食えていたのであれば、日本の社会や文化、ましてや経済などはいったいどうなっていたんだろうか、などと二人してむなしくもはかない意見をぶつけあった夏のはじめの夜だった。

***高雄の青年夜市***

ピーマン




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台湾ちんほうちゃ日記

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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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