旅は静かに減速する

 新竹東門城から斜めに延びる中正路に入った。信号待ちの人に新竹南寮漁港往きのバス停の場所を聞いて新竹駅にほど近い太平洋SOGOまで歩く。念のためだからとバスを待つ人にも港に往くことを確かめてその列の最後にならんだ。

 どこの都市でもそうであるように街の中心部から離れるに従いバスを降りる人が増え車内は閑散としてきた。夕暮れも終わり窓の外はだいぶ暗くなった。

 30分ほどして南寮の停留所に到着した。バスから降りたところでちょうど散歩をする夫婦が通りかかったのでここでも港までの往き方を尋ねた。
 
 風が吹く方角に、風上に向かって、ほとんど一直線に延びる道を歩いた。

 波止場にはいくつか船が停泊していた。海のずっと向こうからは湿りけを含んだ潮風がゆっくりと運ばれてくる。夜のとばりも落ちついた頃であるのに空気はまだ熱がこめられ額に汗がにじんだ。それから、港の匂いはどこでも同じなんだな、と思った。

 近くで黒いタイワン犬がひとりでトコトコと散歩している姿があった。よく見ると他にも同じような犬がいて、それぞれがおもいおもいの格好で歩いたり寝ころがったりしている。鎖につながれてないだけ台湾の犬は自由だな、と思った。東京ではもうこの風景を見ることはできない。

 近くに漁産直銷中心という市場のような建物があった。中に入ると店ごとにいろいろな色をした魚や貝たちが氷とともに陳列され、水槽には海老がぴちぴちと泳ぎまわっていた。

 途中で階段があったので2階に上がった。テーブルが置かれているスペースがある。テーブルにはメニューがあり冷蔵庫にはビンビールが冷えていた。どうやらレストランのようで、店先にならんでいる魚介をその場で調理して新鮮なうちに食べることができるらしい。

 閉店の時間が迫っているのか、自分たち以外の客はほとんど見かけなかった。朝の開店が早いだけに夜の閉店も早いということだろうか。今日は金曜日。時間は既に20時30分を過ぎていた。

 特に腹が減っているわけでもなかったので何も食べず外に出た。建物の前には2、3店ほど小さな屋台が店を開いていたので喉の渇きをいやすためスムージーのような細かい氷の入ったフルーツジュースを飲んだ。

 薄暗い公園のわき道を歩いてバスを降りた道路に戻る。野菜売りのおばさんに新竹市街方面往きのバス停の場所を教えてもらう。セブンイレブン前の停留所の時刻表には、バスが20分後に来ると書いてあった。

 スマートフォンをONにしたときに、青く光る画面の上に透明な水玉がはじけた。雨が降り出したようだ。

 空を見上げると、喉の奥にかすかにざわめくものがあった。小さく咳き込むと同時に重く鈍い違和感を覚えた。どうやら風邪の前兆のようだ。その異変は具体化され、やがて実体化されることを確信した。それから、台湾一日目にしてこれからの旅がひどく重々しくなるものに思えて、なんだか寂しくなった。

***新竹南寮漁港***

新竹南寮漁港



ブログランキング・にほんブログ村へ
台湾ちんほうちゃ日記

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

非公開コメント

みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

最新記事一覧

渓頭往きのバスが満席だから 2018/06/20
プラットフォームは向こう側 2018/06/13
たおれるくらいの酒の量 2018/06/08
昌平路のガチョウめし 2018/06/01
台中追分途中下車 2018/05/27
風景区の止みきれないさびしさ 2018/05/21
ながれながれて新店線 2018/05/18
象山から、シーンをつなげ! 2018/05/12
巡りあわせと選択のなかで、記録をとめない 2018/05/06
車輪のいいわけ 2018/04/30
屋根にキリンがいないころ 2018/04/22
1/13サヨナラノート 2018/04/15
地下の誠品R79 2018/04/08
夜がおわるまで 2018/04/01
高は高雄の高 2018/03/25

Twitter

ブログ村

メールはこちらから☆

mvcos.infini@gmail.com

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR