朝の混迷

 7月15日。枕元のけたたましいタイマー音で唐突に眼が覚めた。時刻は7:30。体はいつになく重い。

 そうして、5分おきに復活するスヌーズと闘っているうちに8:00になった。半身を起こすも関節のうごきは棒のように鈍い。喉の奥には寒天のような痰がつまっていた。「あああ」とためしに発声してみるが果たして濁音であった。回復するどころか昨日よりも悪化していた。

 海老のように体を曲げてベッドの上で悶絶した苦しい夜が思い返された。寝ながら、咳は無慈悲に断続していた。きちんとした休息があるとすれば回復の見込みがあるが、それができないとなれば回復は遠くなる。咳が咳を助長させている。

 原因が原因を引き起こす原因となっている以上、いったいどうやってその原因を取り除けばいいのだ。

 昨晩ほとんど効き目のなかった咳止めの薬を飲むために、また少しでも体力をつけたほうがいいかと思い、私は、いつもは摂らない朝飯を食べに階下に降りた。朝飯はバイキング形式で、パンやお粥、それに台湾のおかずとフルーツがそれぞれの器に小刻みに盛られていた。
 
 私はお粥を少しと野菜を多めに摂った。咳止めを飲んだ後、睡眠不足の頭を少しでも覚醒できればとコップ一杯にコーヒーをなみなみ注いで、さえない胃に流し込んだ。

 ざっくりと支度を済ませてロビーに行くと既にブンちゃんは待っていた。ブンちゃんは私の声の異変にいち早く気付くとすぐに心配そうな顔をした。私は余計な気遣いをさせたくなかったので、大丈夫だ大丈夫だと言って、会話のときはなるだけハンカチで口を押えるようにした。

 今日は朝からブンちゃんの友人と新竹駅で合流することになっていた。台湾で台湾人の友人を紹介してもらうことほど頼もしく心強いものはない。私はこれからの旅がどんなに楽しく愉快に満ちたものになるか思い描いくとともに、あまりにも万全とは言い切れない自身の体調を憎んだ。

 街は朝にして猛暑の兆候を示していた。台湾では普通のことかもしれないが、日本であれば間違いなく猛暑として注意喚起のテロップがながれる。

 新竹駅は1913年に造られた台湾にある最も古い駅舎というだけあって、古さの中にも威厳と風格があった。土曜日の駅舎は行楽でどこか遊びに行こうとする人たちで賑やかだった。

 改札を抜けたホームでブンちゃんの友人に会った。大学生くらいの歳の女の人で名前をハイさんと言った。挨拶もそこそこに、内湾を目指す私たちは、改札のあるホームから3番のホームへ続く階段を登っていった。

***朝の新竹駅で***


新竹の朝1

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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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