過ぎし日、映えれば

 建物がたくさんあつまった通りのかどにひときわ古そうな木造の建物があったので、僕は、ブンちゃんとハイさんにつづいてなかに入っていっていった。見上げる建物のかべには内湾戲院とかいてあった。

 なかは食堂になっていて、しかも昼飯の時間帯だったためか、たくさんある円卓はどこも人でいっぱいだった。円卓の向こうは赤い垂れ幕のついたステージがひろがり、奥のスクリーンには古そうな映画が上映されていた。
 
 ブンちゃんに聞いたら、むかしの映画館だったところを改装したもので、今はレストランになっているということだった。そして、客家料理が食べられということだ。かねてより、新竹には客家人がおおく住んでいると聞いていたので、なるほど、ここで本場の客家料理が食べられるというわけだ。

 スクリーンでは、どこかお笑い系の風体をした役者が、何やらいたずらをしようとあちこち転げまわっていた。飯を食っている人は、それを観て笑っていた。むかし台湾ではやっていた映画ということだ。台湾映画といえば、僕は「幽幻道士」(台湾では殭屍小子)を知っていたんだけれど、それよりもずっと過去の映像だった。

 料理が威勢よく運ばれてくると、僕は今までの咳のしすぎで体力を消耗してしまっていたのか、かなり腹が空いていたようで、ぜんぶの料理がそろわないうちに、さっそく豚肉と野菜炒めみたいな皿に箸をつけていた。

 ひとくち食べて、僕はすぐに箸をおいてしまった。これは、食えない。まずいのではなかった。食えないんである。ビールがないと、もったいなくって、食えないんである。完全にビールを求める味だった。

 ブンちゃんはその様子にめざとく気づき、にやりと笑うと、すぐ店員さんを呼びつけ、台湾ビールの大瓶を注文してくれた。ブンちゃんはやさしい。

 ブンちゃんとハイさんと三人でビールを乾杯した。スクリーンにながれているお笑い映画と相まって、気分はだんだん楽しくなってきた。冷房がびゅうびゅう吹いているのに体だけがぽかぽかしてきて、そしてまた、咳がしたくてしたくてたまらなくなってきた。そうして、酒を飲むと体の管全体がゆるんでしまうようで、喉の奥のほうからむずむずむず痒くなって咳が起こりやすくなることがはじめてわかった。

 料理はどれもこれもビールにぴったりの味だったから、大瓶はすっかり空になった。最後に、味付けのタレのかかったご飯をかきこんだら、お腹コンクリ状態になってしまった。もう食えない。

 店を出る段になりカウンターにいくと看板がかかってあった。ぽつぽつこびりついた茶色い錆がその年代を物語っているように思えた。

 店を出た僕らはふたたび内湾の街を歩きはじめた。

***内湾戲院人文客家菜館***

内湾戲院1

内湾戲院2

内湾戲院3


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台湾ちんほうちゃ日記

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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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