ふたつめの均衡

 内湾駅からふた駅目の合興駅でおりた。ここには何があるんだい?わからないままに友人に聞いてみたら、なんでも、愛がある、という話だった。

 ホームから無人の改札をぬけてすぐ目にとび込んできたのは、古いむかしの車両で、青い車両のなかは今ふうのファンシーなカフェになっていた。

 カフェを横目にしばらく歩いていくともうひとつ駅舎があらわれた。木造の建屋で白の板壁に合興車站とかいてある。きっとこっちが旧駅舎なんだろう。

 駅舎のちかくにはオブジェや小物がいたるところに配置されていて、そのどれもが間違いなくにかかわるカタチやコトバで表現されていた。

 駅の周辺はそれほど広くないようで、20分ほど歩いていたらほとんど見るところがなくなってしまった。次の列車がくるまで30分も時間があった。

 日陰のかさなる木のベンチに腰をおろして、ペットボトルの水をひとくち飲んで喉をうるおした。

 スマートフォンで合興駅を検索してみる。そのむかしこの駅を舞台に男女の尋常ならざる愛の物語があって苦難の道を経てふたりはいずれ結ばれることになる、というなんとも映画みたいなエピソードがでてきた。

 うーん。愛、なのか。

 自分にとってはもうほとんど遠いところにいってしまった言葉だった。聞いただけでなんだか足の裏がむずがゆくなってくる。そういう時代がないわけではなかったが、ある頃からひとりでいることを楽しんでいたら、いつの間にかひとりでいる時間が永くなってしまっていた。

 自由を選択しつづけた結果が愛を遠ざける結果につながったとするならば、それはきっと正しくない。おそらく世界にはいろんな種類の愛があって、それがどんな時にどんな形でどんな風に目の前にあらわれるかは、いつも気まぐれで、それから先それをどう受けとめるのかも本人の自由なのだ。どうにでもなれる、どうなったっていい、という自由なココロでいれば、いつでも、だれでも、自由なんだ。

 むき出しになった足のほんの一点にチーンとした感覚があった。みると足首にゴマ粒のような黒い点があって、条件反射的に右手がその箇所をピシャリと叩いていた。手のひらに血が赤黒くとびちった。叩いたところがかゆくなった。となりに座っていた友人に荷物をたくして、すこし歩くことにした。

 旧駅舎の前のすこし広場になったところから、なにやら赤い色の掲示板らしきものがみえた。近づいてみると、ハートの形をした無数の赤い錠前が金網の目を埋め尽くすようにガッチリと括り付けられていた。

 離さない。離れない。錠前。ハートの錠前。愛の形。錠前。自由。錠前。自由。錠...

 なんだか、わからない。自分が何をカンがえているのかも、わからなくなってきた。

 合興駅にはおおくの人が遊びにきていて、散歩をしたり、写真を撮ったり、歌をうたったり、おおくの人たちがそれぞれの休暇をいろんな格好で楽しんでいた。

***合興の愛情駅で***


合興の愛情駅1


合興の愛情駅2-1


合興の愛情駅3-1



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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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