溶けていった日々

 内湾から新竹にもどってその足で阿忠冰店にきた。最初それとは気が付かなかったけれど、入り口に立ってみてはじめてその店だと分かった。それだけ来ていないということだから記憶もほとんどなくなりかけていたわけで、あのころの、6年まえの風景がいっきによみがえってきたんである。

 入り口もおなじ、注文するところもおなじ、メニューもいたっておなじ、椅子も壁も床も、きっとすべてがあのころのままだ。

 前に食べたものとおなじかき氷を注文してみた。入り口で氷をかいて切ったマンゴーのせたらできあがり。シロップはお好みでかける。

 2階から3階に上っていく途中で3人がすわれる席がちょうど空いた。かばんを下し、マスクを外し、さっそく溶けかけた氷にスプーンを差しこんだ。生きかえるほどの冷たさに躊躇する理由なんてない。我をわすれていっきにガシガシやった。

 うまい!冷たい!うまい!冷たい!うまい!冷たい!痛い!うまい!痛い!うまい、けど痛い!あたま痛い!!!

 左右のこめかみを自動扉で締めつけるような、にぶい痛みがはしった。でも、なつかしい痛み。ガリガリ君をがりがり食ってた小学生のころと重なった。

 100円玉をにぎりしめて、近所の駄菓子屋にはしってたころ、家にはないくらいのでっかい冷凍庫のガラスの取っ手をおこぞかに上にスライドする。冷たいケムリがいっきに汗まみれの顔をとりかこんだ。

 100円で一個しか買えない箱入りチョコアイスなんかじゃなくて、100円で二個買えるガリガリ君を手にしてた。量もけっこうあるから、食べきれなければ残ったもうひとつは明日にとっておけばいい。でもやっぱり明日にまで残ることはなくて、あっという間に、二本とも口のなかにしゅわしゅわって溶けてった。

 もうほとんど水になった最後の氷をながしこんだら、もう暑い気分なんかどこか遠くにきえてしまった。とたんにまた咳がゴホゴホとではじめたので、マスクのゴムひもを耳にかけた。

 ブンちゃんもハイさんも、まだやっとお皿の半分を食べきったくらいだった。

 「またそんなにはやく食べて。おなかこわすよー」

 「そんなこといったってよ。日本じゃあ、こういうのなかなか食えねえからな。かき氷の上にのっかるのは赤とか緑のシロップくらいなもんだよ。フルーツがのっかるなんて、僕のガキのころはそんなのメイヨーだったんだぜ」

 そういえば、子供のころ食ってたかき氷といえば、イチゴとかメロンとかの風味の人工的な色のシロップがかかっているものだった。かき氷のうえに果物をそのままのっけるなんてやり方は、けっこう大胆にみえて、じつはものすごく天然なことしているんだな。

 すっかり体力を回復した僕たちは、皿をかたづけて、きいろの逆光にかがやく新竹の街へ飛び出していった。

***新竹の阿忠冰店***


新竹阿忠冰店




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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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