台湾ちんほうちゃ日記

~ガイドブックにない無目的が目的の究極のひまつぶし~

日常の分岐点

2012年6月25日 南投

 台中駅で二水往きの切符と集集線の一日乗車券を買ってホームに出てしばらくすると、赤や青や黄色のカラフルな列車がやってきて僕たちを乗せた。扉が閉まると列車はゆっくりと走り出した。

 朝の10時を過ぎた車内には、通勤や通学の忙しさを忘れたかのように、安泰の時間が流れていた。退屈だった僕は、スマートフォンのfacebookを開いて、各駅に止まる毎にチェックインをして遊んでいた。しばらくチェックインを続けていたが、員林とかいう駅のあたりで、矢継ぎ早に現れる駅の間隔についていけなくなり、そのうちに止めてしまった。顔をあげると、窓から差し込む初夏の光が、緩やかな空気の間を満たして、車内に幻想の風景を浮かび上がらせていた。

 この風景には見覚えがあった。幼い頃に遊んだ、あの暖かい日なたの風景だった。

 向かいのシートには、母親が男の子と女の子の間に挟まれて、絵本を膝の上に座っている。明るい窓の下にはのんびりとした顔が自由の安らぎの中をゆっくりと泳いでいた。僕はやわらかい日差しの風景を、どこか遠くに置き忘れてきたような心持になった。

 ふと斜め前を見上げると、仕事場への移動であろうか、革の鞄に、襟のボタンを開けたワイシャツ姿のサラリーマンが一人、クリアファイルの資料を眺めながら吊革につかまっていた。本来であれば自分も忙しく仕事に追われている時間であった。しかし車両からは、会社勤めの日常が、別の世界の出来事のように見えていた。

 日常の風景にいる彼と、非日常の空気に溶けている自分とを、対極にある両岸のようにぼんやりと思いめぐらせた。2つの世界を分ける隔たりは、他愛もない心の持ちようで、如何なるようにでも変わるものではないのか。自分の思い込みから少し離れてみるだけで、心の束縛なんていくらでも解放してやることができるのではないのか。共有した車内で、共存している心理の矛盾を、不条理の中で噛み締めていた。

 そんなとき、向かって右の方角から、先頭車両の方向から、白い光が差し込んでくるのを見た。ガラスの窓から列車の進む道が見えている。景色が左右に流れている。バナナの木であろうか、果物畑が広がる南国の風景が、非日常の時間の中で、平静の如き単調の顔で連続して繰り返されていた。列車はゆっくりと単線の上を走っている。カタン、コトンと、レールの間隔を、なるべく離すような速度で音を立てていた。

 二水駅を過ぎると列車は集集線に変わった。台中駅から乗車した列車は分岐点を持たない直通列車だったのだ。僕たちは乗り換えることなく、列車はそのままの形で終点に向かった。手に握りしめている切符は一日乗車券だった。途中で降りても再び切符を買い戻す必要がない。どこで降りてもよかった。列車の中で僕たちは自由を感じた。途中で下車した駅の標には水里と書かれていた。

日常の分岐点

ブログランキング・にほんブログ村へ
台湾ちんほうちゃ日記

  1. 南投
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:0
<<鷄肉先生 | ホーム | おあちぇん名人>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://chinhoucha.net/tb.php/13-6067c236
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィールです。

みのりおん

Author:みのりおん
台湾はちんほうちゃな食べ物であふれている。でもそこで出会ったのは、食べ物ばかりでなく、美しいシゼン、よく眠るイヌ、そしてとても優しいヒトビトだった。そのどれもが、明るくて、のんきで、楽しくて。そんな「ちんほうちゃ」な出来事を、とりためた写真の隅っこから、いつもニヤニヤしながら切り取っているんです。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味です。
※本ブログの登場人物は基本的にすべて仮名を使用させていただいております。

いろんな場所にいきました。

台北 (10)
基隆 (2)
新北 (4)
新竹 (14)
苗栗 (3)
台中 (11)
彰化 (4)
鹿港 (2)
南投 (5)
日月潭 (3)
嘉義 (4)
台南 (10)
高雄 (11)
屏東 (4)
墾丁 (4)
小琉球 (2)
宜蘭 (10)
花蓮 (10)
太魯閣 (2)
台東 (11)
台湾日記 (1)

ぶろぐ村です。

facebookもやっています。

Twitterはじめました。

メッセージはこちらから☆

mvcos.infini@gmail.com

月別アーカイブ

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR