台湾ちんほうちゃ日記

~ガイドブックにない無目的が目的の究極のひまつぶし~

道は高美湿地に通じて

 高美湿地遊客中心のバスターミナルに着いて、手当たり次第に停留所の時刻表をスマートフォンのカメラに収めていた。今度ばかりはバスを逃すわけにはいかない。

 停留所のあるところから道づたいに歩いていくと上下左右にまがりくねったフシギなカタチをした橋がかかっていた。橋をわたりおえると幅のひろい歩道が視界の先へいっきに突き抜けた。

 右手は見渡すかぎりの海がひろがり、左手は白い巨大な風車が一本一本ずっと遠くにまで立ち並んでいた。

 海からやってくるのか、風車がとばしてくるのか、立っている横顔に、風がぼうぼうと音をたててひっきりなしに吹きつけてくる。それでも、陽射しはまだまだ燃える光線をそのままの勢いで照らしつけて、観光で来ていた人びとは斜めにのびた風車の影にその身を重なるように、いじらしくもしたたかにその場をやり過ごしていた。

 夕暮れになるかならないかの時のさなか、ひとつの方角に向かって、歩いている人の一団に気がついた。いったいどこに行くんだろう。

 人びとのながれにつづいて、ほとんど一本になっていた道を歩いた。おもしろいくらいに、みんな同じところを目指しているふうだった。

 さいしょは白っぽかった逆光も、歩きすすむにつれてだんだん真横からさす黄色い光にかわっていった。心なしか、それまで青かった空は雲がふえはじめ、空はどことなく狭くなったような気がした。

 人びとが歩いていくのは、土手状に盛り上がった長い堤だった。堤をへだてた海のある方面は、こともあろうか、水たまりがところどころに点在しているだけの、周辺のほとんどが草地によって占められた地面だった。そのずっとずっと先になってやっとはじめて、海が、おそらくは浅い海がひろがっていた。

 海の反対側は道路になっていた。今日が縁日であるかように、そこには屋台がびっしりと並び、たくさんの食べ物からケムリが立ちのぼっていた。人の密度はいっきにふくれあがって、にわかににぎやかな様相を呈した。

 前を歩いていた人びとの群れは、隊列をたもったまま海上にのびる桟橋に向かっていた。その先、ずっと遠くの、桟橋が尽きているところに、海面にまざってゴマ粒のような黒い点がちいさく動いているのが見えた。

 あたたかい時間だった。それでも、時間は刻々と、しかし確実に過ぎていった。陽は落ちはじめている。

 空はいつの間にか雲のカーテンが幾層にも積み重なっていて、そして、雷の音が、遠くの雲のあいだから、かすかにふるえているのが聞こえていた。

***高美湿地に陽が落ちる***


高美湿地



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テーマ:エッセイ・散文 - ジャンル:小説・文学

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Author:みのりおん
台湾はちんほうちゃな食べ物であふれている。でもそこで出会ったのは、食べ物ばかりでなく、美しいシゼン、よく眠るイヌ、そしてとても優しいヒトビトだった。そのどれもが、明るくて、のんきで、楽しくて。そんな「ちんほうちゃ」な出来事を、とりためた写真の隅っこから、いつもニヤニヤしながら切り取っているんです。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味です。
※本ブログの登場人物は基本的にすべて仮名を使用させていただいております。

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