あかるい左營、あの日の予兆

 「どこでもいいよ。ほんとうだ。もうどーこだっていいんだよ。でもまあ、あえて行きたいところをあげるとするならば、インスタ映えするところかなあ」

 「わかた。どこでもいんだな。じゃオレ10時に左營で待てる」お決まりのいいね!でリブヲとのメッセンジャーは終了した。

 朝、台中から左營へ移動する。連休のグズグズ感覚が染みついた体からしてみれば、けっこう早いくらいの時間であったが、滞在の期間もそれなりに限られている一般の旅行客でもあったので、そんな試練もよろこんで受け入れた。

 台中駅から台鐵區間車に乗って新烏日駅に着いた。すこし歩けばここにもまた台中駅がある。台湾高速鉄道という新幹線がはしる台中駅である。節約のため指定席をケチって買わないでいたが、自由席でもかなりの余裕があったので、ちょっと得した気分になった。

 高雄左營駅の改札を抜けたところで、リブヲは待っていた。普段いつも東京で会っていたリブヲであったが、こうして外国の地で改めて会ってみると、なんだか不思議な気持ちになった。もっとも彼からしてみれば高雄は故郷であり、僕はたんなる外国人にすぎないのである。

 「おいそれ、ちょっと恥ずかしいな」リブヲは僕の顔をいちべつすると開口一番に言った。

 僕は台中からあの変顔マスクを着けたままここまで来ていたのだ。

 「仕方がないんだよ。風邪をひいたらしい。別に君にうつす気はないよ。でもうつしてしまったら、すまない」

 「そうじゃね。そのマスクおかしいな。おかしい人間にみえるな、キミは」

 「よく言うよ。台湾人はいつもみんなこうして変なマスクしているんじゃあないのかよ。台湾で売ってたんだぜこのマスク。それに台湾人は個人主義でそもそも周りなんて気にならない自由勝手国民じゃなかったのかよ」

 「そうだとしても、誰もそんな変なマスクなんてしねえ」

 左營駅の駐車場は改札を抜けてエスカレーターを上がった先にある。バックパックを後部席に預けて、僕は助手席にすわった。リブヲは運転手になった。

 「いまから屏東にいく。屏東でいいな?屏東はいい景色とれる」

 車は駐車場から高雄の市街地に降り、そのまま高速道路にはいった。

 「ところで君と同じタイミングで高雄に来ることができて助かったよ。僕は何するかまったく考えてなかったからさ」

 「そうか。でも今日だけだ。明日はオレ遊んであげないな」

 「いいよ、今日いちにちだけで十分だ。ところで明日はなんの予定があるんだ?彼女がいるわけでもないのに」 

 「会社の面接な。オレ東京の会社辞める」

 フロントガラスの頭上で、鉄橋がこうこうと音を立てて通り過ぎ、車はいつしか屏東にはいっていた。

***左營の朝、そして屏東へ***

takao-pinton1.jpg

takao-pinton2.jpg


ブログランキング・にほんブログ村へ
台湾ちんほうちゃ日記

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

非公開コメント

みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

最新記事一覧

風景区の止みきれないさびしさ 2018/05/21
ながれながれて新店線 2018/05/18
象山から、シーンをつなげ! 2018/05/12
巡りあわせと選択のなかで、記録をとめない 2018/05/06
車輪のいいわけ 2018/04/30
屋根にキリンがいないころ 2018/04/22
1/13サヨナラノート 2018/04/15
地下の誠品R79 2018/04/08
夜がおわるまで 2018/04/01
高は高雄の高 2018/03/25
おでん屋のマナー 2018/03/18
金魚れもん 2018/03/11
排骨と飯と午後の予感 2018/03/04
アタマのコンクリとけだした 2018/02/25
風の方向に帰ります 2018/02/18

Twitter

ブログ村

メールはこちらから☆

mvcos.infini@gmail.com

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR