台湾ちんほうちゃ日記

~ガイドブックにない無目的が目的の究極のひまつぶし~

ココロの休館日

 「あした高雄の会社面接する」

 永遠に終わりが来ないんじゃないかと思えるくらい道は容赦なくどこまでも続いていた。運転席のリブヲは、右側車線の前方に決意の視線を向けていた。

 「オレ、来月で東京の会社やめる」

 「おい!そうか。そうなんだな。じゃあこんどこそ本当に台湾人にかえっちゃうんだな。もう、日本語は話さないし、話せなくなるんだな。そうなんだな」

 はたから見たらいくらか動揺が入り混じったヘンに脅迫めいた言葉が口をついた。

 リブヲはハンドルを握ったまま、その問には何も答えようとしなかった。

 ビンロウの木とマンゴー畑が途方もなく広がる緑の平地に、いっぽんの道路がゆったり横たわっている。その上を、大量の野菜をくくりつけた原付バイクが、トコトコ音をたててドアの横を後ろに過ぎていった。

 それまで遠くで白くかすんでいた山々も、本来の荒々しい濃緑色をさらけだしてきた。風景にも、民家や店がぽつぽつと増え、徐々に街のすがたを形成しはじめていった。屏東県の三地門は、台湾原住民のルカイ族やパイワン族が多く住んでいる地域と聞いていた。

 車はいくつかの角を曲がり、山裾らしいゆるやかな勾配に入っていった。

 「ここはつり橋がある。見るか?」

 「お、うん。そうだな。見よう。見ようじゃないか」

 台湾原住民族文化園區とかいた案内版を過ぎると、やがてゲートらしきものが見えてきた。目の前に降りるバーの先には、広い駐車場があった。

 「ちょっと待てろ」

 リブヲはそう言って運転席のドアを開けると、ゲートの近くの受付小屋に走っていった。掃除をしていたおじさんに、何やら交渉をもちかけているふうだった。

 少し経ってから、リブヲは車に引き返した。そこには、肩を落としてがっかりした様子があった。

 「きょうは休みだ。休業だ。でもお願いしてみた。やっぱり入れない。ダメだった」

 「そうか、まあ別にいいよ。いいんだ。僕は気にしないよ」

 「月曜日だからな。月曜日は休みがおおい」

 「仕方がないよ。日本じゃお盆休みでも、台湾は平日なんだ。みんな仕事しているだろ。でもせっかく来たんだから、写真だけでも撮らせてもらうよ」

 車を降りると、幾重にも連なる山々が視界いっぱい見渡すことができた。おおきく空気を吸って、おおげさに吐きだしてみた。夏らしい心地のいい山風が吹いている。ふと、山の中に小さな橋がかかっているのを見た。

 「琉璃吊橋だ。写真撮ったら、つぎ、行くぞ」

 僕は、ズーム機能のないカメラで、少しずつ方角をかえながら何枚か写真を撮ってから、リブヲの車に乗り込んだ。

***台湾原住民族文化園區の前で***

台湾原住民族文化園區




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テーマ:エッセイ・散文 - ジャンル:小説・文学

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Author:みのりおん
台湾はちんほうちゃな食べ物であふれている。でもそこで出会ったのは、食べ物ばかりでなく、美しいシゼン、よく眠るイヌ、そしてとても優しいヒトビトだった。そのどれもが、明るくて、のんきで、楽しくて。そんな「ちんほうちゃ」な出来事を、とりためた写真の隅っこから、いつもニヤニヤしながら切り取っているんです。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味です。
※本ブログの登場人物は基本的にすべて仮名を使用させていただいております。

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