六合目のスイギョーザ

 屋台の数も観光客の数も高雄でけっこう規模がでかくてとにかく有名な夜市というけれど六合国際観光夜市に来たのは今日がはじめてだった。

 いままで出会った高雄の友だちの誰もがこの夜市に行こうと言わなかったし、自分からもすすんで行きたい思うこともなかった。

 理由はいろいろとあって、友だちはいつも通っている地元の夜市がいちばんだというし、自分もやはり地元の人が行くところに間違いはないと確信していたからだ。

 観光客がおおい夜市というのは、なんとなく気合が必要な気がして、なんだかそれだけで疲れてしまう。といっても自分もれっきとした観光客だった。

 ところがどういう風の吹きまわしか、なにか心の奥底でそういう心理的精神的転換期に差し掛かったのか、突如、リブヲは行ってみようかと言いだした。

 「とくに大陸から観光客すくなくなった。人がすくない。今はいい」

 「そうなのかあ。爆買いも爆食いも減ったのかあ。それは日本もおんなじだあ」

 もうかなりのところまで腹が減ってきていた僕は、気のぬけた声のまま二つ返事でリブヲの提案に賛成していた。

 高雄忠烈祠壽山をバイクでぶいぶいと下って、美麗島のちかくまでバイクを走らせた。夜市のはじまる通りから一本裏道に入ったところでかろうじてバイク一台ぶんのスペースが空いていたのでエンジンを停めた。

 ガイドブックで読んだとおり、道の両側にずらっと屋台がならんでいる。しかし思っていたほど、ひっきりなしにぎゅうぎゅう詰まっているという感じではない。前に行った瑞豐夜市のほうが圧倒的なイモ洗い状態だったと思えるほど、意外と歩きやすかった。

 方記水餃の屋台の白いテーブルに空きがあったので、僕らは水餃子を一皿注文してテーブルについた。

 「ところでよ。東京で君とメシを食ってたころ、よくビール飲んでいたよな」

 僕は東京のことを思い出して言った。それには「もしもここが東京だったら」というちょっとした空想が入り混じったものだった。

 するとリブヲはビニールを外したばかりの箸を置いて「まてろ」と言い残すと、屋台のすぐ向かいにあるセブンイレブンのなかへ入っていった。それから缶ビールを二本ぶらさげてかえってきた。

 自分は別にそういうつもりで言ったわけではなかったので、なんだか面倒なことをやらせてしまったな、と一瞬後ろめたい気がしたが、もう目の前のプルタブをパチンとやらないわけにはいかなかった。

 さっそく湯気のあがる水餃子をひとつ口にほうりこんだ。

 「はひい、はひいよ、ほうおふうお、ヒー」

 口の中に溜まるよだれで少しずつ冷めていくタイミングで食う。そのあいだにビールを流し込む。僕はリブヲと競うように皿の上の水餃子をつついた。

 「どう考えてもこれはフツーの水餃子にしか見えねえけど、よくもこんなフクザツな味がだせるよな」

 僕はふだん自分から進んで餃子を食べる方のタイプの人間ではないんだけれど、こんなに味の密度が濃くて肉感があって具体的にうまいものだったら、毎日でも食いたい。

 「日本にないか」

 「まあ、この値段で同じもんは、ねえな。君はこれからここにあるものが毎日食えるんだぜ。ありがたいと思えよな」

 これから高雄人にかえるリブヲを、僕はちょっとだけうらやましいと思った。

***はじめての高雄國際觀光六合夜市***

六合夜市-1

六合夜市-2



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みのりおん

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