風の方向に帰ります

 原生植物園から続いた歩道橋がだんだんと地上におりてくるとヤシ科の木とその向こうに水たまりが見えた。水たまりといっても近づいたらこれがまたけっこう大きな池で、なんだか見おぼえのある景色だなあと、もっと遠くの向こう岸あたりに目をやったら、黄と赤をこきざみに着色した塔が二つ並んで建っていた。

 「ああ、なるほどなるほどなあ。そうかそうか、そういうことだったのかあ」と、ついついため息がでた。

 いったい何がどう「そういうこと」なのか。この突発で意外な発見を今すぐだれかに知らせたくて仕方がなかったが、もっともだれにどう知らせればいいのかもよくわからないので、結局まあ黙って眺めているしかないのだ。

 池の名前は蓮池潭といって二つの塔は龍の塔と虎の塔の龍虎塔だった。台湾のどのガイドブックにも載っている高雄の由緒ただしき観光地で、左手の龍の口から入って右手の虎の口から出ると、災い去って福が来る、ということであった。

 自分のなかでいままで「点」だった場所が、ふいに、こうしてなんの関りもなく縦にも横にも「線」になって繋がってくると、やっぱり「なるほどだなあ」と感心してしまうのだ。

 太陽は相変わらず陰険な熱帯光線を放っていたが、ときおり水面からながれてくる生暖かい風がなんの目的のない頭に
いい塩梅に作用して、そのまま池の岸にそって歩いていた。

 途中で、高雄の名産、特産、土産物なんかを集めたオレンジ色の屋根の高雄物産館を過ぎて、またしばらくすすむと樹が生い茂る散歩道に通じた。ガジュマルの樹の下のベンチに座って、いったん汗をふいた。ペットボトルのお茶はもうなくなっていた。
 
 友だちに渡そうと思って持ってきた菓子はチョコが入ったものだった。こんな暑い日にチョコを持って歩くバカはさすがにいないだろうと思っていたが、それが自分だとはじめてわかって、また黙ってしまった。黙るといってもまわりに話し相手はだれもいないので、ひとりでうなずいている以外にないのだ。

 「チョコも溶けたし体温も上昇したしもう帰るかなあ」

 Google mapをひらくと「なんだコラ急に起こすなコラ」と、さっきまでいた原生植物園から蓮池潭へ、現在地ポインターがカックンカックンなげやりに移っていった。

 蓮池潭の近くには左營駅があった。なんだ近くにあるじゃないの。

 冷房がキンキンに効いた高雄MRTのプラスチックの座席にすわっているところを想像しながら、僕は小気味よい足取りで、風といっしょに駅の方向に歩いていった。

***蓮池潭にて***

蓮池潭1

蓮池潭2


ブログランキング・にほんブログ村へ
台湾ちんほうちゃ日記

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

非公開コメント

みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

最新記事一覧

渓頭往きのバスが満席だから 2018/06/20
プラットフォームは向こう側 2018/06/13
たおれるくらいの酒の量 2018/06/08
昌平路のガチョウめし 2018/06/01
台中追分途中下車 2018/05/27
風景区の止みきれないさびしさ 2018/05/21
ながれながれて新店線 2018/05/18
象山から、シーンをつなげ! 2018/05/12
巡りあわせと選択のなかで、記録をとめない 2018/05/06
車輪のいいわけ 2018/04/30
屋根にキリンがいないころ 2018/04/22
1/13サヨナラノート 2018/04/15
地下の誠品R79 2018/04/08
夜がおわるまで 2018/04/01
高は高雄の高 2018/03/25

Twitter

ブログ村

メールはこちらから☆

mvcos.infini@gmail.com

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR