おでん屋のマナー

 高雄はおもしろい街で、車で通りかかった民家の軒先に「大正拾年七月壱五日建立」とかいた石碑が突如あらわれて僕とトマス君をおどろかせていた。

 「高雄に大正が?!」「大正に高雄が?!」「なんでだなんでだ?!いったいなにがどうなった?!」

 互いに訳のわからないことを叫びつつ、そういえば台湾の日本時代は大正時代もあったんだよなあ、そうすると高雄にも大正時代があったんだよなあ、だからいいんだよなあ、てなことをふと思い返しこの問題はすみやかに解決した。

 ホッとしているとトマス君の友だちと称する男がやってきて車の後部座席にすわった。聞けばトマス君の台南成功大学時代の同期だという。そうしてこれから三人でおでんを食べに行く、という訳である。

 「台湾のおでん食べたことありますか?台湾ではオーレンと言いますよ」

 トマス君の友だちは今日たまたま会社が休みだったそうで、眠たそうな目をパチパチさせながら初対面の僕に台湾おでんというものをかるく講釈した。

 それまで僕は台湾でなにを食べてもそれをキチンとおでんと意識してこなかったので実際のところ台湾のおでんを食べたのかどうなのかどうもあやしいところがあった。

 着いたのは左營区にある口福黑輪というおでん屋だった。なるほど黑輪と書いてオーレンだな。店先に腸詰がぶら下がり、ガラスケースに野菜が山盛りされ、屋台風の調理台からぐつぐつと煮込んだ湯気がいそがしそうに立ちのぼっていた。

 「みのさん!なに食べたいですか!なに食べたいですか!」

 トマス君たちは食材をえらび調理台のおっちゃんに量をつたえた。おっちゃんは食材をすばやく皿にのせ、慣れた手つきでそいつをジョキジョキとハサミでカットしていった。店内のテーブルはまたたく間におでん皿で埋めつくされてしまった。注文してから出てくるまでがおそろしくハヤイ。

 炭火でグリルした台湾ソーセージの香腸と大腸。あまい台湾マヨネーズのかかったタケノコサラダ。さつま揚げみたいな黑輪片はうすくて噛みごたえがあり魚の味が凝縮されてしみじみとうまい。スープは豚の血を固めた大腸豬血湯であった。血もかたまればもう肉である。

 とりわけ肉や豚の内臓系がおおく、食材のどれもが新鮮で、スパイシーな味付けのうえに香ばしいにおいがする、というところが日本のしっとり和風おでんとは違っているところである。これにビールが加わればもう絶叫である。

 僕はいつの間にか顔からぬらぬらビール光線を発射していたのかもしれなかった。トマス君はふいに立ち上がり店の冷蔵庫から瓶ビールを取り出してきた。

 「いやいやいや、違うんだってば違うんだってば。いいんだいいんだ。やだやだ、ちょっとちょっと~~~」

 というふうにはじめはかるく抵抗をこころみるも栓を抜いてしまえば結局グビグビ飲んで、それから食った食った。遅くにとった昼メシが今になって結構こたえているが、まあでもあのとき大盛りにしなかったことがせめてもの救いだな、と悩めるココロを沈めつつ三人でおでんをつつきあった。

 まだ17時半で本格的な夕飯の時間ではなかった。しかし店のテーブルはどこも誰かがおでんを食べていた。そしてこのあと僕らのテーブルに章魚とかいてタコのおでんが追加されたのであった。

***高雄のおでん屋、口福黑輪***


高雄のおでん1

高雄のおでん2



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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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