巡りあわせと選択のなかで、記録をとめない

 8月にしてはずいぶんと冷たい雨がこの1週間ひっきりなしに降り続いていた。ときおり湿気た部屋のせまい窓の向こうの鉛色の空を見上げては、ひとり鬱々とした気持ちでモニターに映る台湾のネット記事を無作為に眺めたりして過ごしていた。

 台湾から帰国してすでにひと月が経とうとしている。まんべんなくのしかかってくる低気圧の閉塞と絶望の重みから逃避しようと、明日から再びはじまる台湾旅行の行程を、くっつけたり、ばらしたり、最終的にはいくつかの候補地を、無統制な情報の中から取捨選択していた。

 「自分を見つける旅にでよう」というよりも「現実を見つめる旅にしよう」と思っている。

 「自分の本当にやりたいことを見つけよう」というよりも「いま自分ができる範囲のことをやろう」と思っている。

 ちっぽけな能力の限界のなかで、この後いったいどうなるのか予測も見当もつかない将来を、右へ左へと、根拠のない天秤にかけては、ただ前進後退を繰り返した。

 念のため部屋の冷蔵庫が空になっていることを確かめて、今夜中に食べきれるだけの食材を求めて外にでた。雨はいつまでも止む気配はなく、家々も、道路も、車も、目に入るものすべてが暗い雨水に溶けかけて、このまま静かに終焉に向かっていくように思えた。季節はずれの長袖シャツの袖にいくつもの不快な染み模様ができた。蝉は鳴いていない。

 お盆休みのためか、いつもの行きつけの総菜屋が閉まっていたので、そこからまたさらに歩いて、すこし値段が高めのちいさな肉屋に入った。肉の切れ端を少しと、それからマカロニサラダが食べきれる分だけ残っていたのでそれもあわせて注文した。プレートからマカロニサラダをパック詰めするとき、店のおじさんはなんだか難しい妙な顔つきになった。

 「お客さん、すみません。ちょっとこれは、売れませんな。こんな天気なもんで。どうもすみません」

 部屋に戻るころには、ジーンズの膝から下あたりが水を吸い過ぎてゴワゴワになっていた。蹴とばすようにそいつを脱ぎ捨て、薄手の部屋着に素早く着替えた。それから、また明日からのことを考えた。

 「どこに行きたいか」というよりも「何を知りたいか」じゃなかったか。

 「楽しい旅をしたい」というよりも「楽しい旅があるのならそれを知らせたい」じゃなかったか。

 自分が知ったことを人に知らせる。そのためには文章が必要で、それから、写真もあったほうがいい。それらを記録して、なるべく多くの人が見つけやすいところにおいておけば、少なくとも知ってもらうことができる。

 だから、明日からも日記を続けよう。

***出国前の雨。東京***

雨、東京



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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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