ながれながれて新店線

 あついあつい象山を下山していちばんにとび乗ったMRT淡水信義線は、もうとにかくクーラーボックスなみのすがすがしさで、樹脂製のテラテラした座席ときたらひんやりしていっきに生き返るようだ。

 もしかすると、MRTはどこかに行くために乗る、という手段としてだけでなく、乗ること自体を目的としてぐるぐる延々とまわっていく、というような観光の方向性を、台北もそろそろ本気で検討しはじめていいんじゃないか、なんてことを亜熱帯式無気力型思考で妄想しつつ、松山新店線に乗り換えた。

 扉がひらいて一歩なかに足を踏み入れたところ、車両の床いちめんが水浸しで、おどろいた。

  「なんてこった。これはいったいなんてこった」

 それはもうプールだった。厳密にいうとプールの絵だ。ちびっこたちは、床に腹ばいになってバタバタわめいて車内はもう大変だ。自分も腹ばいになっていっしょにバタバタわめきたいと思い、気になりながらも、オトナ特有の無関心をふりまき決して動揺せず見て見ぬふりをしていたら、とうとう終点の新店駅まで来てしまった。

 乗客があらかた下車したあとで、すっかりプールになってしまった床を観察した。なるほど、これはラッピングというやつだ。となりの車両に移ったら、こっちはバスケットコートで、さらにとなりは陸上競技のトラックだった。あとになってわかったんだけれど、このころ台北で開催されたユニバーシアード競技大会(2017年8月現在)のPR広告なのであった。

 新店駅の改札を抜けたところで腹がグウと鳴った。そういえば朝早くに機内食を食べたきりろくにモノを口にしていない。駅前の信号をナナメ横断したとところで、赤ちょうちんがぶらさがるメシ屋があった。歩道にはみ出たテーブルには、地元の人たちが集まってメシを食っていた。きっとうまい店なんだろうな。

 しかし、バックパックを背負った僕は、明らかに場違いな外国人観光客で、おおく地元民のひしめくメシ屋というのは、こういう立場の者にとってなかなかに入りにくいものなのだ。

 店を通り過ぎるついでに、軒先にかかっていたメニューを横目にのろのろと歩いていたら、なかの人に声をかけられた。

 言葉がわからずややうろたえ気味だったが、横でメシを食っていた学生君がふいに立ち上がり「ヒツジ」「ブタ」「メン」「ゴハン」「イチバン」などなどカタコトの日本語であれやこれやとメニューを翻訳してくれるではないか。

 その間も、メシを食っている地元の人たちが、あたたかくもほほえましい視線をこちらにひたすら送ってくるので、僕は目立ってしまって、恥ずかしくもなんだかうれしかった。

 羊肉のたっぷりはいったスープとルーローファンと青野菜炒めを注文して、そして食った。

 店を出て看板を見上げた。店の名は鮮風味湯品屋といった。それから、急に夕立がやってきた。
***新店の鮮風味湯品屋***

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みのりおん

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※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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