昌平路のガチョウめし

 追分から台中に移動する列車のなかで台中の張さんからメッセージがはいった。

 「いま台中に来てますか?よく来たよく来ました!今晩いっしょに食事しますよ。いいですか?」

 最後に張さんに会ったのは今からもう5年も前にさかのぼる。そのときは台中のいろいろなところに連れて行ってもらって、いろいろなものを食わせてもらい、とにかく食えるだけ食って、それでも最後まで食いつづけていたら、日本にかえったころには4キロも体重がふえていた。

 きっと張さんは、仕事中にたまたま僕のSNSの投稿を見て、僕が台中に来ていることを知ったのだろう。そんな突発的でささいなきっかけから、晩飯を食う、というもっとも本質的な案がたちどころに浮上したのである。

 「張さん、ひさしぶりだなあ。じつは僕は今日から台中に来ている。しかし台中台中だけれど、今いるのは追分で、台中に着くのはおそらく20時を過ぎてしまうよ。それにそのあとホテルにチェックインして、荷物を降ろして、、、」

 「わかったわかった、オーケーオーケー!ホテルに着いたらメッセージください。またメッセージします」

 その日張さんはバイクに乗ってやって来た。

 「車を停める場所をさがすのはタイヘン。今日はバイクです。オーケー?」

 張さんに言われるがまま、僕はヘルメットを受け取り、それを汗くさい頭にかぶせて、後部シートにまたがった。

 夜の台中の街は、平日だというのに賑やかで、車やバイクがひっきりなしに夜の空をあかるくしていた。

 張さんが運転するバイクは、昌平路二段の通りに面した小さな店の前でとまった。

 「私最近知りましたよこのお店。ここはうまいです。おすすめ!いちばん!」

 お店の名前は大發鵝肉といって張さんの説明によると「鵝」はガチョウのことで、なんでもこの店はガチョウの肉がうまいということだった。

 入り口の調理台のところで張さんは常連客のように手際よくさくさく注文していき、お店のお姉さんもハイハイと手慣れた調子でアツアツの皿を次々にテーブルの上に置いていった。でてきたのは、鵝血粽というガチョウの血でかためた餅と、アサリスープの蛤蜊湯に、それから鵝肉飯というガチョウ肉がのっかった飯だ。

 ガチョウの肉はなんというか、もうとてつもなくうまかった。うまみの源ともいわれる塩分に、もしも塩加減の分布というものが存在するならば、これはきっとそのどこかたった一点だけにあるとおもわれるうまみポイントに、まさしく意図的にうまいぐあいに当て込んでつくりました、というほどのうまさだった。自分でもよくわからないけれど、人がもっともうまいと感じる塩の加減。そんな微妙な点を、ものの見事に突いていた。

 備え付けのタケノコはもうほとんどメンマで、それだけでも飯がすすんでいく。とうとうテーブルに冷えたビンビールがドンとおかれた。

 僕は、飯の上のガチョウの肉を、一枚、一枚、ビールとともにながしこみ、それから肉を数切れだけのこし、ドンブリをわしづかみにすると、ガチョウ汁の染み込んだ白米をガシガシガシガシとひたすらかきこんだ。

***台中のガチョウめし大發鵝肉***

大發鵝肉1

大發鵝肉2


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台湾ちんほうちゃ日記

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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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