青い海の再訪記

 2013/7/15 花蓮

 花蓮で知り合ったばかりの姉ちゃんが、僕に、自分が運転するバイクの後ろのシートに乗るよう言っている。僕の知っている限りの、バイク二人乗りの図というのは、両腕をわっかにして運転手の胴体に抱きつく体勢というイメージがある。身体に密着するような姿勢を、僕が、この姉ちゃんに対して行ってもいいのだろうか。。。

 そういえば!と、ここで僕はちょっと変なことを思い出した。台湾人は日本人男性に対してスケベという強烈な印象を持っているという。何かの本で読んだことがあった。

 そんな懸念もあったので、僕はどうしたもんかとその場でモジモジしていたんだけれど、乗れと言われて乗らないわけにもいかないので、スケベだと思われないように気をつけながら、姉ちゃんからなるべく離れるようにして、シート後ろのスレスレの位置に、尻を突き出すような格好でまたがった。

 ここで姉ちゃんの身体にガッツリとしがみきでもしたら、やっぱり日本人男スケベ説は本当のことだった、なんてことになってしまうんだろうか。置き場のない両手をぶら下げていろんなことを想像していると、尻の後ろの方でなにやら金属質のような感触があった。振り返ると荷物を括り付けるリアキャリアだった。

 もしかしたら、この金属の出っ張りに手のひらを固定しておけば、少なくともバイクから振り落とされるリスクは減るだろうし、何よりも手のあやしい動きも封じられるので、日本人男スケベ説は発現することなしに済ませられるかもしれない。ホッと胸を撫で下ろしたところで、バイクはビーといって加速した。

 バイクは無慈悲にも加速、減速、右折、左折を繰り返し、そのたびに、僕の上半身はおきあがりこぼしのようにゆらんゆらんと上下左右に運動した。それでもニンゲンの適応力というのはおそろしいもので、暴れバイクの気まぐれ重力移動に体がバランスを失うと、両手のひら一点にからだ中の全ての意識が集約されて、尻をうまいぐあいに座席と一体化させるテクニックが身についてくる。最後のほうになると、手のひらに込めるべき力の量を、1から5までの5段階に無意識のうちに調整できるようになっていて、握力の無駄な消費を抑えてエコで快適なドライブができるまでに至った。

 大きな交差点で信号待ちをしながら、熱くなった手のひらを休憩させていると、頭のすぐ上を戦闘機が通り過ぎて、ごうごうという音といっしょに気持ちのいい大風を吹きつけていった。花蓮の街を風を切って駆け巡るという体験は、普段の生活ではなかなか味わえないものがあった。新鮮わくわくするような、そしてどこか懐かしい空気を、僕はからだいっぱいに受けとめていた。

 バイクは美崙工業団地を走り抜け、花蓮師範学院を通り過ぎた。車の数が少なくなるにつれて、空はだんだんと大きく見えるようになってきた。大きな石造りの案内板には七星潭風景區と書かれている。海岸は遠くから緩やかなカーブを描いて、湾には青い青い海が広がった。海も青かったけど、それ以上に空が青かった。

 同じ場所は昨年にも訪れている。その日はくもりだったので空は今日みたいに青くなかった。それでも海は青かった。民宿から自転車を借りてひとりで走り出した。南濱公園を抜けて、花蓮港の風に涼み、建設現場みたいなところで迷子になった。寄り道ばかりしていたので花蓮の中心街から七星潭に到着するまで1時間以上かかったと思う。途中に日本時代のものと思われる神社の鳥居があって、そこで日本語を話すおじいさんに会った。おじいさんは今も元気でいるだろうか。

 目の前いっぱいに広がる青い海に、だんだんと夕暮れの顔が近づいていた。既に肉粽(にくちまき)の消化を終えた僕の胃袋にも、腹ペコの時間が近づいていた。


青い空と青い海



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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
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