台湾ちんほうちゃ日記

~ガイドブックにない無目的が目的の究極のひまつぶし~

バスの運ちゃんと

2013年8月21日 台東

ホテルに帰るため台東の新駅から台東市街に向かうバスに乗り込んだ。

バスの中は私の他に乗客はいなかった。

23元の切符を買うと運ちゃんのすぐ後ろの座席に座った。

定刻になったのか、エンジン音が鳴り、バスはぶるんと震えた。

とうとう、私以外に乗客はやって来なかった。

バスは市街に向けて走り出す。

伽藍堂のような車内には、気の抜けたスピーカーから台湾の演歌が流れている。

旅の疲れが一度にでたのか、睡魔が襲ってきた。

日本であれば、うたた寝したい気分だった。

でも、ここは台東。私にとっては慣れない土地なのであった。

ホテル付近と思い当たる場所があれば、すぐさま降車ブザーを押して、運ちゃんに降りることをアピールしなければならない。

発音が聞き取れない中国語のアナウンス。まだ見ぬ異国の地名を表示する電光掲示板。

朝見た外の景色の記憶しか頼るものがなかった。

まどろみに逆らうように、目だけを爛々と輝かせて、窓の外を食い入るよう見つめ続けた。

既に日の落ちた黒い街は、朝の面影を微塵も残していなかった。

期待している景色は一向にやって来ない。

疲れと不安と空腹が、次第に高まってきた。



もしかしたらもう通り過ぎてしまったとか。いや、まだまだ時間がかかるものだ。この先を少し行けば、、、ここではないようだ。次かもしれない。きっとそうだ、もう少し行ってみよう。。。



心の中で終わりのない自問自答をただひたすら繰り返していた。

窓の外に顔を張り付けてたまま、いつまでたっても降車ベルを押せないでいた。

そんな私を不憫に思ったのか、バスの運ちゃんは私に言った。



   ニーチュイナーリー?(どこに行くの?)



中国語で答えを返すことができなかった私は、鞄の中からホテルでもらった地図を取り出し、運ちゃんに渡した。

運ちゃんは運転席のうす明かりの中で軽く頷くと、大きな車体を狭い路地にぐんぐん走らせた。再び夜の街が流れ出す。



    ここでいいか。



運ちゃんの指差す先には自分が泊まっているホテルが見えた。

バスはホテルの入り口の前まで来ていたのだ。

自分が今まで乗っていたのは、果たして、市バスだったのだろうか。

狐につままれたように、私はその場にただただ立ち尽くしていた。



台東バスの運ちゃん



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台湾はちんほうちゃな食べ物であふれている。でもそこで出会ったのは、食べ物ばかりでなく、美しいシゼン、よく眠るイヌ、そしてとても優しいヒトビトだった。そのどれもが、明るくて、のんきで、楽しくて。そんな「ちんほうちゃ」な出来事を、とりためた写真の隅っこから、いつもニヤニヤしながら切り取っているんです。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味です。
※本ブログの登場人物は基本的にすべて仮名を使用させていただいております。

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