がらんぴ熱帯あぢいあぢい注意報

  僕らは公園の入り口で40元の入園料と引き換えにチケットを受け取った。鵝鑾鼻(がらんぴ)と書かれたその公園は、やたらに画数が多くて、いささかあやしい匂いを漂わせている感じがあったんだけれど、墾丁の中ではとりわけ人気の観光地なのであった。

 鵝鑾鼻公園はその墾丁のさらにさらにずっと南にあった。いわゆる台湾最南端である。熱帯モンスーン気候だから、あぢいのなんの。高雄から車で3時間ちかくかかったけれど、いままでずっと運転していたフェイちゃんは、顔に疲労の片鱗も見せることなく、僕たちを先へ先へと導いていくのであった。

 ゲートで半券がビリッとやぶられ僕らの目に飛び込んできたものは、ぎらぎら太陽をいっぱいに浴びてうれしそうに光り輝く芝生の大きな広場だった。芝生はゆるやかな斜面上に広がり、いろいろな格好をした人々の群れが、緑のじゅうたんをころげまわるように歩いていた。

 芝生にはしる石造りの歩道は、ずっと先にある森の入り口に向かっていた。森の中はうす暗くて、そのぶん涼しかった。湿り気のある土と草の間と、木々がトンネルのように覆いかぶさる下に、手作りの歩道が上下左右にうねりながら続いている。逃げていくトカゲが草をゆするところや、カニが目の前を素早く横切るところなど、自然の生き物がしたたかに生きる気配というものが、そこかしこで充満していた。

 道のいたるところに案内板が立っていて、おもしろそうな道がいくつも枝分かれしていたんだけれど、ここでも僕らは招かれざる生き物に対峙していたことを付け加えておかなければならない。どこからともなく寄ってくる蚊の大群は、僕らにゆっくり散策をしている余裕をあたえず、そのため、早くこの森を抜けることをいちばんの優先事項することで僕たちの意見は一致したのである。

 森がひらけてくると、歩道はウッドデッキにかわった。吹き付けてくる風の中に、潮の匂いが混ざりはじめていた。デッキをさらに歩いていくと、海が広がった。深い青色をした海は、空の青色と重なって、どこまでもどこまでも青く続いているようだった。すぐ下は海岸になっていて、岩にはじけた波のしぶきが小さな粒になり、ときおり風にのってぷちぷちと顔に当たってくるのであった。

 僕らは再び芝生を踏んだ。芝生はここでもゆるやかな勾配になって、上へ上へと続いていた。光をさえぎるものが何もないのをいいことに、太陽はさっきよりも凶暴になって、僕らの頭と背中をじりじりと照りつけ、足の下からは地面の熱気がぐわしぐわしと這いのぼってくるのであった。

 あぢいよあぢいよたすけてあぢいよとクラクラした頭で歩いていくと、白い建物の一部がぼんやりと見えはじめてきた。白い建物は次第にはっきりした輪郭をもって、やがて青い夏空の中に真っ白い灯台がぽっかりと姿を現したのであった。

 灯台の周りには、土産物屋が一軒あって、店の前にハガキや貝の細工などの小物が所狭しと並んでいた。周囲はおびただしい数の観光客が集まっていたんだけれど、腰を掛けるものはおろか、ここにも太陽をさえぎる日陰という日陰がなく、じっとしているだけも汗が吹き出してくる有り様だった。

 ぐるりと白い塀にかこまれた灯台の近くには、何棟かの建物が併設されているようだった。中に入れば、日陰になるような場所があるに違いない。塀の近くを歩いていくと、一定の間隔で、背の低い白い壁にいくつかの小さな四角い穴があることに気がついた。塀の内側から穴の向こうを眺めてみたら、絵葉書のようなバシー海峡が見えた。
***墾丁鵝鑾鼻公園で***




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台湾ちんほうちゃ日記

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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
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