苗栗で出会った神さま

2012年8月23日 苗栗

 台北からバスに揺られて3時間ほどして苗栗という街に着いた。本当だったら2時間で着くはずだったのだけれど、どういうわけかうっかり途中で下車してしまい、国道のど真ん中のなにもないところで降りてしまったのである。たまたま近くにあったお店の人が道を教えてくれたので、タクシーを呼んでもらい、やっとの思いで街の中心まで運んでもらったのである。

 あまり考えずに行動していたドジ間抜けおっちょこちょいの僕は、のっけから余計な時間と無駄なお金を使ってしまったので、そんな行動を後悔するとともに、これからはじまる苗栗の旅がなんだか幸先の悪いものに思えてしかたがなくなってきた。
 
 ちょうど昼飯を食べてもよい時間ということもあったので、食いしん坊の僕ははじめてやってきた苗栗の街を詮索して、うまそうな飯を食おうと思った。手に持っていたガイドブックを開いたら客家料理店という店がさっそく目に入ったので、そこだと思い、付録の地図を頼りに向かっていった。

 ギラギラ燃える太陽とフライパンのようなアスファルトに挟まれて、ただひたすら歩いた。車もバイクもない貧乏旅行者だった。目的の場所はなかなか着かない。暑いから頭がぼーっとして着かないのか、着かないから暑くなって頭がぼーっとしているのか、考えてみたけれど暑すぎる頭ではぼーっとするだけで分からなかった。

 鄉園客家小館という店に着いた頃は、既にお昼のピークを過ぎてしまっていた。カランカランと扉を開けたら、お店の人がのんびりと遅めの昼ごはんを食べていた。

 すぐに気のよさそうなおじさんがやってきて 一人で来たのか? と指一本立てて見せたので 一人で来た。 と答えたんだけど、ついでだから地球の歩き方に紹介されているお店の写真を見せてみた。おじさんはしばらくそれを興味深そうに眺めてから、ふむふむと頷き、何か分かったとでも言うかのようにさっそうと調理場に向かっていった。

 台湾にいるとよくあることなんだけど、こちらが日本人だと分かるとたいていみんな笑顔になる。知っている限りの日本語で話してくる人もいる。日本人かと間違うくらいに日本語がペラペラの人もいる。実際に本物の日本人もいる。

 お店の人たちは、一人で来る客が珍しかったのか、洪水のようにありとあらゆる質問を浴びせてきた。

 日本のどこから来た? 台湾にはどれくらいいるの? 台湾で仕事か? 結婚しているのか? 彼女はいるのか? 台湾の女はどうだ? 紹介したら付き合うか? 可愛いぞ! 付き合ってみろ! 

 これではまるで結婚あっせん所じゃないかと思ったけど、可愛いければ付き合ってみたいとも思った。

 矢継ぎ早に繰り返される質問の洪水に溺れかけてきたころ、とうとう料理が運ばれてきた。助かった。


 えっ?!っと・・・ 


 なんか様子がヘンである。ガイドブックに載っていた写真とあきらかに違うのだ。僕はてっきり大きなお皿にてんこ盛りされた料理がでーんと出てくることを覚悟していただけに、いささか拍子抜けした気分になった。

 スープを含めたらおかず5品あってそれぞれが小碗に分けられている。

 僕が知っている限りの客家料理はたいてい大皿で、それをみんなでつついて食べるのが基本だ。ガイドブックの写真も大皿だ。しかし目の前に置かれた料理は果たして一人前の定食であった。いろいろ食べたいだろうと僕ひとりのために少しずつの量で一品一品をわざわざ小分けにして調理してくれていたのである。いろいろと食べることができるので、この気遣いはとてもありがたかった。

 野菜炭水化物がバランスよく配置されており、偏りがちな食生活をしている、特に僕のような一人男にとっては、必要な栄養を十分に補うことができるものであった。

 炎天下のなかを歩き続けて喉がずっと乾きっぱなしだったので、ガラス張りの冷蔵庫にあったペットボトルを指さしたら 好きなものを飲んでいいよ。 と言っているようだったので、特大サイズの1リットル入りのお茶のボトルを手に取ってテーブルに戻った。

 この後も店の奥から人が入れかわり立ちかわりやって来ては、僕を中心にほのぼのとした談話がまったりと続いたのだ。言葉のほとんどは知らないものばかりであったけれど、ときおり片言の日本語も交えてくれたので、まともに会話できていないのに会話しているような気分だった。みんなとてもいい人たちだ。

 言葉もろくに通じない一見客のような僕のために手間のかかる料理を作らせてしまい、さらにペットボトルのお茶までもいただいてしまった。そして一人客のはずなのにみんな集まってきてくれて、一人でいることを全く忘れてしまいくらい笑顔あふれる楽しい食卓を過ごすことができた。もしかしたら可愛い台湾美女も紹介してくれるかもしれない。

 ここはちょっとカッコつけて少し多めにお勘定して気分良く出て行こうと、鞄から財布を取り出して トーサオチェン(いくらですか) と聞いたら、おじさんは プヨンプヨン(いらんいらん) と言った。僕は自分のお腹を見て「うーむ」とうなずいた。この数日で台湾飯をたらふく蓄えているお腹は確かにプヨンプヨンして豊かな丸みを帯びている。何いってんだ。今はお金を払うのであって腹の話をしているわけではないのだ。もう一度まじめな顔で「トーサオチェン(いくらですか)」と尋ねたら。おじさんおばさんみんな声をそろえて ウォーチンリー(おごりだ) と言った。

 冷房のよく効いていた店から一歩足を踏み出すと汗が一気に吹き出た。この汗が湿りかけた瞳を、目立たなくしてくれたらいいのになと思ったけれど、目に入ってくるとやっぱり痛かった。

苗栗の神様


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台湾ちんほうちゃ日記

コメント

さぽぽ

ハロー!遊びに来ました♪
ちゅんちゅんさん、こんにちは♪
気づいたらいっーぱい記事が更新されててビックリ!
やっと動き出しましたね(笑)待ってました!
ゆっくり読ませてもらいます\(^o^)/
これからもよろしく☆

*さぽぽ*

ちゅんちゅん

Re: ハロー!遊びに来ました♪
素敵で可愛いさぽぽちゃんXDD 
哈哈~いつもありがとうよ~^^ 
さぽぽちゃんのディープな台湾ブログも笑顔で続けてね! 

これからもよろしくね>▽< 

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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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