アンピン散歩道

 タライほどの籠からはみ出るくらいに盛られた海老せんべいが次々に袋詰めにされていた。そのすぐ後ろで山積みになったドライフルーツがたたき売られていた。かき氷をガリガリくだく音にまじって、パチパチと油を揚げる匂いがただよってきた。腸詰めを焼いた煙がたなびいて、ガラス台のなかのカットフルーツが甘い光沢を放っていた。色とりどりのおもちゃ屋の軒先で子供がはしりまわっていた。

 露店の立ちならんでいる往来はなんだか今日もやっぱりにぎやかだった。そこには、休日の昼さがりといった穏やかで、そして懐かしいあかるさがあった。それは以前に来たときとちっともかわらない、屈託のない晴れやかさをともなうものであった。
 
 僕たちは午後の散歩にひと休みをいれることにした。台湾の友人が「台南名物」と言うそれは、食パンをくりぬいてシチューをつめた棺材板という食べものだった。名前の由来はその棺桶の風体からきている。僕は竹づくりの低いテーブルに前のめりになって、とろみが熱くないのを確かめるようにおそるおそる棺の中身を口にはこんだ。中身が大方なくなりかけたところで、水分を吸ってクタクタになったパンを舌先で折りたたむようにしてもぐもぐと口におさめた。

 歩道がややひろくなるあたりまで来ると、レンガ造りの階段と城壁が見えてきた。その先の高台からのびる展望台の白い壁が、西からの日射しを受けてやっぱりまぶしかった。

 台南は台湾でもっとも古い都で日本でいう京都にたとえられることがおおい。なかでもオランダ人の手で築かれたと言われるこの安平古堡は、アジアというよりもむしろヨーロッパに近い風情があるように思えた。

 赤い屋根の展望台の蒸し暑い階段を汗をかきながら登っていった。てっぺんの四方にひろがるガラス窓には、ほんのりと塵や埃が堆積しているようで、ガラス向こうの安平の街を、こころなしか昔風の写真のようにあせた色に映してみせた。

 いっぽうで史跡記念館はよく冷えていた。僕は冷風にできるだけながく当たっていたかったので、送風口の上下のスイングの動きに合わせて体を行ったり来たり往復していた。そんな子供じみたことをする僕を見て、台湾の友人はやっぱり笑っていた。

 安平古堡は、古城遺跡や昔の砲台、そして鄭成功の彫像など、歴史の痕跡をおおく残している。しかしそれはもう幾度も見てきたものだった。しかし台南に来るとどうも安平あたりに足が向かってしまうようだ。そして、あきらかな理由はないんだけれど、またいつかきっと、ここに来る気がした。

 2015年7月3日 台南の安平あるき


アンピン散歩道




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台湾ちんほうちゃ日記


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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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