ヒノキの森と低気圧

 宜蘭の友だちのミツル君の車に乗って羅東林業文化園區まできた。羅東駅からも歩いて10分かからないというから電車でもこられる場所だ。羅東駅宜蘭駅から3駅はなれたところにあるからそんなに遠くもない。

 僕はミツル君に「僕にとってはじめての宜蘭なのに宜蘭で遊ぶんじゃなくていきなり羅東ってちょっとさみしいじゃないか」と言ったら、ミツル君は「ぼくの実家なんだからしかたがないじゃないか、でもぼくの故郷だからこそキミに案内してあげたいんだよ」と、父親の車を借りてくるほどの張りきりようだった。

 僕はガイドブックにあまり紹介されないような派手じゃない場所がけっこう好きだったりするので、実のところ、そうした場所に行けるということがけっこううれしかったりしていた。

 雨は小雨ていどのものだったけれど、降ったりやんだりを繰り返して、傘がいるのかいらないのかわからない、ふりかけみたいな空だった。だけどはなっから僕は濡れちゃこまるような柄でも性格でもないのでさして気にもならない。

 園内にはいると古めかしい木造の日本風の駅舎が建っていて、すぐちかくの枕木のうえには丸太を積んだ蒸気機関車が乗っかっていた。「ここはむかし竹林駅だったところで森林鉄道が走っていたんだよ」と、ミツル君はいささか控えめにしかし得意げに言った。かつて、台湾の北東にある太平山から木を切りたおしては鉄道にのせてこの竹林駅まで運んでいた、ということであった。

 見わたしてみると、このひろい敷地のまんなかには貯木池というこれまたひときわおおきな池があって大量の木がぷかぷかと漂流していたから、これは太平山から運んできた木材を保管しておくためにつくられた池だということもわかってきた。

 付近にはやはりなんだかむかしの日本の建築様式をおもわせる森産館森活館森動館といった、やたら森づくしな名前の建物があって、その内部は自由に見学できるんだという。

 僕たちはそのうちの森産館に靴を脱いであがった。玄関のちかくに切り株で台湾島を形づくったモニュメントがあって、同時にツンとした木の濃厚なにおいが鼻をついた。ヒノキだ。そうすると山から運んできたという木も池に浮かんでいた木もさっきの駅舎もヒノキということになるんだろうな。

 ついでに森活館ものぞいてみた。靴を脱ぐ度に僕は「ウランティレボウ」という最近おぼえたての台湾語をつかってみた。それは「ごめんください」という意味の言葉で、実際になかのひとに通じたかどうかわからなかったけれども、それをみたミツル君は、すこしはずかしそうに、照れたわらいを浮かべていた。

 森活館にはむかしの小道具らしきものがたくさん展示されているようで、畳の部屋にはなつかしい黒電話があったり、年代もののストーブのうえには今にも沸騰しそうな旧式の丸いやかんが乗っかったりしていた。

 ミツル君は僕よりもひとまわり年下だったので、僕は「ミツル君はこの時代を知っているかい?」とエラそうに聞いてみた。ミツル君は「哈哈哈~」とあいまいな返事をした。

 雨もやんだので、僕たちは貯木池のまわりを歩いた。水のざわめきにまじって、ちかくの木陰から野鳥が飛びたつ音と、チチチと鳴く声が聞こえて、5月のおわりといえども、地上からむらむらとよじのぼってくる蒸気は、けっこうそれなりに暑かった。

***羅東ヒノキの森公園***

ヒノキの森と低気圧




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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
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