夜が更けたらまぜまぜソース

 高雄旗津に来た。まえに隆君とフェリーに乗って来たことがあったけれど、今日はその隆君と、同じく高雄のファンちゃんとで車で海底トンネルを抜けてやって来たんである。

 台湾に来るといつも約束をしていたわけでもなのにみんな僕を遊びにさそってくれるから、孤独なひとり旅によくある「人生とは何か」とか「自分とは何か」などと、自己の内面を深く見つめなおすという機会がなかなかやって来ない。

 とはいっても、見つめなおしたところでしょせん僕になど何もわかりはしない、ということもよくわかっているから、たとえひとりで過ごしていたとしても、結局はボーッと気泡コンクリ頭のままただそれを眺めているだけなんだな。だからみんないつも相手をしてくれてほんとうにありがたい。

 旗津高雄の西にある砂州といわれるほそ長い半島で、なかでもひときわにぎやかな廟前路という通りの両側には、氷のうえに新鮮な魚介類をならべた海産物店や、煎餅やおやつなどのいろとりどりな食べ物の屋台がいくつもひしめき軒をつらねていた。

 それでもやはり夜の10時過ぎともなれば、たとえ今日が日曜日であったとしても、人は閑散となり、店じまいをはじめる店もちらほらでてきた。

 僕らはすでに晩飯を済ませたあとだったので、海岸からふきつけてくる風にあたりながら、すこし静かになった夜の港街を散歩していた。

 そんなころ、ガラスケースの向こうに緑色に赤い色が混じったまるい果物をならべている店があった。果物はガラスケースのまえにも山盛りにつまれている。

 隆君とファンちゃんは、まるで察したかのように、路上の、すでに誰もいなくなったテーブルについて、僕のためにその果物を注文してくれた。

 皿に盛られてでてきたのは、どうやらトマトのようである。ほとんど緑色をしていたけれど、カットされた中身をみたら、もうまったくもってトマトだったんである。そして、トマトといっしょにできてたお椀には、茶色い液体に白色の練りもののようなものがプカプカと浮いていた。

 この食べ物、台湾では蕃茄切盤というらしい。いわゆるカットしたトマトなんだけど、店先のメニューボードをみると古早味とか沾醤という文字もいっしょに書かれてあって、ファンちゃんが教えてくれたことによればそれはソースのことで、高雄では古早味沾醤ソーストマトにつけて食べる、ということであった。

 僕は教えてもらうままに、ソースの材料である醤油砂糖おろし生姜を、箸ばこからつまんだ箸をつかっておもいきり高速でかき混ぜた。さいしょ水っぽかった液体は、みるみるうちにどろどろの液体にかわって、街灯の明かりのなかでてらてらとあやしく光った。

 これってトマトにあうんかいなあ、と僕はなんだかキツネにつままれたような思いで、つまようじに突き刺したトマトをソースの中にころがしてから一口で食べてみた。熟しすぎていないトマトのすっぱさに、あまくてしょっぱくてすこしホットなソースがからみあって、いままでに体験したことのない不思議なカンカクが舌先と表面にひろがった。塩をかけて食べる文化に古くから慣れ親しんできた身としては、おまえは果物なのか、それとも野菜なのかと、トマトに問いかけてみたくなったが、この食べかたをしてもビールにあうのはきっとまちがいなかった。

 店のちかくには天后宮があって、今日もたくさんの赤ちょうちんがぶら下がっている。まえに来たときはまだ昼間だったから、青い空と赤い球体のコントラストが印象的だったけれど、夜の今日は、黒い空を、くっきりと赤くてまるい形にいくつも切り抜いていた。

***夜の旗津にて***

夜更けのまぜまぜソース




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台湾ちんほうちゃ日記



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みのりおん

台湾の街とか田舎とか飯屋をウロウロとあるきまわる無気力無思考無頓着なタワイモナイ日々をなけなしの写真とバカな文章でただひたすら書きつづけます。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味。

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