台湾ちんほうちゃ日記

~ガイドブックにない無目的が目的の究極のひまつぶし~

友達のともだちは哈花族

 2013/7/15 花蓮

そうか、花蓮に行くんだね!花蓮には私の友人がいるんだ。君さえよければ彼に案内するように伝えておいてあげよう。

 宜蘭のホテルの受付で仲良しになった兄ちゃんに、これからどこ行くのと聞かれたもんだから、花蓮に行くと答えてみると、花蓮の友人を紹介してあげると言うのだ。

 旅行の計画を立てるのが大の苦手な僕は、当然のように花蓮に行って何をするかなんて決めていない。もしかしたら、何もしないでホテルと食い物屋を往復するだけの日々も叙情があっていいなあ、と空想しているくらいの体たらくだった。

 いつもそんな感じの行き当たりばったり適当イイカゲンこの際どうにでもなれコノヤロー的な旅行なもんだから、兄ちゃんのココロ温まる提案を断る理由なんて見つかるはずがない。ふたつ返事ですんなりOKした。

 宜蘭駅で自強号という台湾鐵道の特急に乗ってから、1時間と10分くらい窓の外をぼんやり眺めていると花蓮駅に着いた。タクシーで向かうのは馨憶精緻民宿という泊まるのは初めてではないけれど、漢字が難しすぎていまだに読み方が分からない名前のホテルだった。それでも日本人のおじさんが経営しているというので、リホウ(こんにちは)とチンホウチャ(とても美味しい)くらいしか台湾言葉をしらない自分にとっては、日本語が伝わるぶんとてもありがたいホテルなのである。

 一年ぶりに見るホテルは一年前と同じで綺麗に整頓されてとても感じがいい。おじさんも僕のことを覚えていてくれた。1泊の料金はシングルで1,100元(日本円でたぶん3,300円くらい)だから財布にも優しい。花蓮で長期に滞在するならいつもここだと思っている。

 友人からFacebookのメッセージがあったので階段を降りて表に出ると、防塵マスクに、日除けの長袖ジーンズ姿のライダーが目に入った。ヘルメットを外して現れたのは女の人だった。宜蘭の兄ちゃんが紹介すると言った友人は、なんと女性だったのである。

 台湾語も中国語もからっきしダメな僕は、用意してきたペンと付箋ではじめて会う姉ちゃんと筆談した。姉ちゃんは台北出身で今は花蓮に住んでいる。修学旅行で花蓮に遊びに来てからというもの、花蓮が好きで好きでしょうがなくなってしまった。台北は人が多いし空気が悪い。つまらないところだ。だから花蓮に住んで花蓮で会社をはじめるんだと教えてくれた。僕は哈花族なの?と冗談ぽく聞いてみた。哈日族(ハーリーズー)という言葉がある。これは日本大好きニンゲンという意味だ。僕は花蓮大好きニンゲンとかけて哈花族としゃれっぽく聞いてみたのである。姉ちゃんはニヤリと笑って對啊!(Yes!)と言った。

 ホテル周辺の街並みはこじんまりと整理されていて、宿屋をはじめ、民家や、洗濯屋さん、薬局食堂なんかがこじんまりと集まっていた。姉ちゃんの勧めで、僕らは近くの廟口紅茶という軽食屋さんで腹ごしらえすることにした。注文したのは肉粽(にくちまき)と豆乳だ。肉粽は、その名前のとおり米のなかから大きな肉の塊がゴロっと出てきて、これだけで夕飯になってしまうんじゃないかっていうくらいの食べ応えだった。

 飲みかけの豆乳を携えさあ出発だ!と勇んでみたところで、ふっと疑問がわきおこった。姉ちゃんが乗ってきたのは50ccの原付バイクを大きくしたような、やっぱり外見は原付なバイクであったし、僕は国際免許証を申請していなければ、台湾の交通事情にも精通していない。僕が後部座席に乗ることは必須だった。でも相手は女性だ。どうしたものかと思案している暇もなく、姉ちゃんは後ろを振り返り、座席の空いたスペースを指さして乗った乗ったとためらう様子もなく指示してきたのである。


哈花族



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鯉魚潭はくもり空

2013/7/17 花蓮

 いつのころからか、食べ物や自然の風景だけでなく、身近にいる小さな生き物なども、写真におさめるようになった。

 その日は慕谷慕魚(Mukumugi Valley)という未だ手つかずの自然で知られる渓谷を観光する予定でいたが、慕谷慕魚は入山できる人数に制限を設けており、私たちはその制限から溢れてしまった。環境保護のためであろうか、1日の入山は午前と午後の2回に分けられ、人数はどちらも300人以下と決められている。さらに身分証明書と合わせて管理局で「入山許可書」を事前に申請しなければならない。私たちは早起きして来たにもかかわらず、他の多くの申し込みで、その日の入山は適わぬものになってしまった。

 仕方がないので、その足で鯉魚潭(Liyu Lake)に向かうことにした。早い朝の空気は新鮮だった。バイクに吹き付ける風はとてもすがすがしく、澄みきった空は見上げれば見上げるほど青く光ってまぶしかった。

 鯉魚潭遊客服務中心という赤い文字が並ぶ石造りの門の前にバイクを停めた。ヘルメットをはずし、おでこにペタリとしなった髪をかき上げると、門を入ってすぐのところに小さな草むらが見える。目を凝らすと草むら全体がチラチラとして、何だかうごめいているようだ。はじめのうちは、目の錯覚か、もしくは草が風になびいているものとばかり思っていたが、どうやらそうではないようだ。

 友人がカメラを取り出して草むらを撮りはじめた。何をしているのだろうと近づいてみると、いくつもの色をしたが、花の前で羽をゆっくりとすぼめたり、唐突に他の花にうつっていったり、ひらひらとして不規則な方向に飛びまわっている。そのひらひらがひらひらを呼んで、どこが植物で、どこが蝶なのか、少し見ただけでは判別がつかないほど一体然として、まるで草むらが一つの大きな生き物のようにまとまっていた。私たちは、鯉魚潭に来た目的を忘れて、蝶が花にとまる瞬間を写真におさめようと、そうっと近づいては、ぐっと息をこらえて、どういうわけか草むらの前で真剣になっていた。

 草むらの向こうにはが広がっていた。目の前は小さな入り江になっていて、突き出た桟橋の両側には、ペンギンやペリカンの頭を真似したボートが、仲良く並んで波の上にぷかぷかと浮かんでいた。
 
 入り江のほとりに屋根つきの休憩所があったので、木の階段を登りベンチから湖畔を眺めた。さっきまで遠くに白く見えているだけだった入道雲が、灰色の腹をうねうねとうねらせて山の近いところにまで迫っている。空の青い部分はみるみるうちに小さくなっていった。空の機嫌を反映してか、青かった水面は濃い緑に落ち込んでいた。

 友人はリュックから水筒を取り出すと、紙コップにお茶を注いだ。朝いれたばかりの、薄くて黄色のいい香りのするお茶だった。台湾バナナをお茶菓子にして、ぼんやりと湖を眺めていた。するとどこから来たのか、黒い子犬が階段を登ってこちらに近づいてきたので、バナナを少しだけ分けてあげた。湖面からときおり風が吹いた。

 鯉魚潭の風景。晴れた日には、背後に広がる山々を、その澄んだ湖面に反射して、きっと綺麗に見えるに違いなかった。すっかり太陽をなくした灰色の空から、雨がぽつりぽつりと降り始めていた。


鯉魚潭は曇り空



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鷄肉先生

 2012年7月11日 花蓮

 お店の入り口で紙1枚赤鉛筆を受け取ると相席のテーブルに案内された。紙には漢字をさらに複雑にした繁体字がずらりと黒い塊になって並んでいた。ただ鷄肉という文字だけが目に付いたのでお店のメニューであることだけが理解できた。

 メニューの前で一人うなっている僕を気の毒に思ったのか、鷄肉のような丸っこい顔をした店長が ハロー とやってきて、繁体字で書かれている料理の説明を始めた。鷄肉先生は英語をとても流暢に話した。

 蒸した鷄肉は当店一番のお勧めであること、クウシンサイは本日入荷したばかりで新鮮であること、ルーローファンは台湾の定番の飯であること、中国語が分からない僕に、英語で親身になって説明してくれたので、僕はホッと胸をなでおろしていた。

 最初に出された料理はの切り身の上に千切りの生姜を乗せただけのいたって簡単な料理であった。白い皿の上で、スライスされたばかりの鷄の肉が、地味な色で佇んでいる。目新しさはなにもない。次の料理を待つ間にでもと、肉の一切れを何の気なしに口に放り込んだ。

 歯に沈み込むの弾力の中から、染み込んだ塩味が細やかにゆっくりと、の油といっしょに口の中に溢れ出した。

 今までと何かが違っているようだ。もう一度、今度は削りたての生姜鷄肉と合わせて口に運んでみる。いろいろな方向に飛び出そうとする味の広がりは、やっぱり過去には経験したことがない、初めて対峙する感覚だった。

 ビールの味でもあった。台湾ビールを追加して気分を改めてから、もう一回、食べてみた。風味という点では同じものを食べたような記憶があった。しかし、今喉を流れた味は、果たして未知のものだった。

 嘗てに、胃の中に収めてきた全ての鷄が一斉に逃げ出さんばかりの強烈な破壊力を持った、ひとつの鷄肉だった。人が気が付かないところにある繊細な一点にまで味を追求し続ければ、このような味ができるものなのか。

 テーブルは人がひっきりなしに入れ替わっていく。観光でやってくるような人もいて、鷄肉先生は一人ひとりのお客に対して料理の説明を丁寧に行っていた。

 たまらなかった僕は、人目をはばかることなしに、たった一つだけ知っている台湾語で ちんほうちゃ と叫んだ。鷄肉先生はちょっと驚いたような顔をしたけれど、すぐにニッコリと、そして満面の笑顔になった。

 美しく薄い一枚の厚みからは、噛むほどに味が染み出して、そしてやわらかい肉には、鷄肉先生のに対するこだわりが集約されているようで、なんだか自然と笑みがこぼれるようだった。

 無意識の中で記録してきた ちんほうちゃデータベース がいとも簡単に更新された。


鶏肉先生



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おあちぇん名人

 2012年7月12日 花蓮

 夜の街を散歩していたらひょいと人だかりがあったので覗いてみると、鉄板の上で牡蠣が飛び跳ねて溶け出す汁の中でじゅうじゅうといって蒸気をあげていた。青菜が落とされると幾通りもの色がヘラの動きにあわせて上になったり下になったりしながらさらにじゅうといって蒸気をあげた。

 店の外ではおばあちゃんがヘラを両手に光らせて、仕上げに向かって俊敏な筋肉を上下に左右に器用に動かしていた。もはや身体の一部のようになった巧みなヘラさばきは、長きに渡り繰り返された技術の集約であり、自由自在に舞う様はもはや芸術の境地にまで届かんとしていた。

 ヘラの先から微妙な熱を鋭敏に捕らえる様子は、精密な機械に予め組み込まれた計算式のように、十人前もの料理の焼きの加減を正確に把握しながら、刹那の中に繊細な調整を繰り返していた。

 感を頼りに矢継ぎ早に等分されてひっくり返される生地は、それぞれの面の鉄板に接触する微々たる時間の違いから個々の焼きの進度の差に懸念を起こさせたが、次々と皿に盛られる完成品にはわずかな違いをもその色に見いだすことができなかった。 

 白い皿の上に最後の一枚が片づけられると、使い古された鉄板の表面には細やかな光沢が現れて、油が塗り込まれたあとをよく拭き取るように銀のヘラが生地の破片を円の外に落とした。

 再び小ぶりの牡蠣が鉄板の上に落ちると横から鶏の卵がからみだし、溶けた粉汁がお玉の中から垂れ込んでじゅうじゅうといって振り出しに戻った。

 自分に配当されるべき一枚を円の中に予感しながらゆっくりと列の先頭に近づいていくと、今まで遠くから傍観していたヘラの躍動感が現実となって迫る眼前に繰り広げられた。

 相席のテーブルに一人腰掛けると、間もなくしてほくほくと皿の上で湯気を出している小料理が運ばれた。

 私はついにオアチェンと対峙する機会を得たのである。

 牡蠣入りオムレツのことをオアチェンと呼ぶ。台湾ではどこでも食べられている屋台の伝統的な料理である。牡蠣と、溶いた片栗粉サツマイモ粉の生地の他に、たっぷりの青菜で構成されている。程良い分量はおやつとしても小腹が空いた時の夜食としても重宝されている。

 向かいのテーブルの皿には自分と同じオアチェンがあった。隣のテーブルの皿にもオアチェンがあった。どこのテーブルの皿にもオアチェンがあった。目の前のカップルはオアチェンの顔をしている。隣のおじいさんもオアチェンの顔をしている。学生も、大人も、子供も、みんなオアチェンの顔をしている。自分もきっとオアチェンの顔をしていた。

 台湾の日常の風景の一つになれたことがなんだかとても嬉しいことのように思えた。


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奇跡の臭豆腐

2013年7月18日 花蓮

使い込まれた鉄の鍋の油に、発酵した豆腐が投げ込まれると、ぱちぱちと音をたてて跳ねた。

花蓮徳興運動場の近くを流れる河の橋のたもとにその屋台はある。

店の前に立つと、まるで絵にかいたような愛嬌たっぷりの丸い顔をしたおじさんが、にこにこして迎えた。

即席で作られたビニール製の天井の下には小さな丸いテーブルが二つと、それを取り囲むように簡単なプラスチックの椅子が置かれていた。

愛嬌おじさんは注文から調理まで一人切り盛りしている。さらに元気いっぱいの裸足である。




  ちょうどうふ!いーが!




人差し指を立て臭豆腐を一つ注文した。

ぴちぴちぱちぱちと、軽快な音が鳴り響く橋の上で、大型トラックがぐうんと鈍い轟音とともに通り過ぎている。

しばらくすると、揚げたばかりの四角い豆腐が、丸いお皿の上で、しゅうしゅうと湯気をたてて運ばれてきた。

熱いままの一つを口に放り込む。

表面はかりかりと歯に心地よく響いて、ふくよかな弾力の中からうまみを凝縮した漬け汁がぷしゃあと飛び出すと、口の中を芳醇な香りで満たした。

豊かな香りの中でかりかりぷしゃあを繰り返し、傍の野菜の漬物でこりこりと口の中を中和する。

世界中のありとあらゆるうまみ成分を抽出してかき集めたら、きっとこのような味になるに違いがなかった。

偏見の向こうには楽園がある。

臭いという先入観が幻影を作り、幻影は放出される臭いで現実になる。現実は独り歩きして苦手という固定観念を生み出す。

固定観念は真のうまみへの到達を妨げる負の産物だ。

体質的に合わないのは仕方がないとしても、実体のない固定観念によって、楽園への招待状を放棄する人たちがいる。

しかし、偏見という、固定観念が作り上げた偽りの防壁を打ち破ることができれば、楽園は容易にやってくる。




   ちんほうちゃ!




台湾語で  とてもおいしい! という意味である。

私はこの言葉以外に、今の自分の気持ちを表現する手段を持ち合わせていなかった。

愛嬌おじさんは、にこにこした顔をもっとにこにこさせて、親指を突きあげた。




   讚!




 讚! はFACEBOOKでいうところの いいね! に該当する。

お店は市の中心から遠く、周りには大きな道路があるだけで、ガイドブックに載っていない。店舗がないため名詞もなければ地図もない。

しかし、本物はどこに隠れているか分からない。

今まで食べたどの臭豆腐よりもうまい、自分の中で一番の、それも最上級の臭豆腐を、遠い街の郊外で知ることになった。

愛嬌おじさんは 讚!だけではもの足りないのか、 讚! 讚! 讚! と三回やってくれた。これも愛嬌である。




  ちょうどうふ!いーが!




皿の上の料理を食べきらないうちから私は二皿目を注文していた。


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プロフィールです。

みのりおん

Author:みのりおん
台湾はちんほうちゃな食べ物であふれている。でもそこで出会ったのは、食べ物ばかりでなく、美しいシゼン、よく眠るイヌ、そしてとても優しいヒトビトだった。そのどれもが、明るくて、のんきで、楽しくて。そんな「ちんほうちゃ」な出来事を、とりためた写真の隅っこから、いつもニヤニヤしながら切り取っているんです。
※ちんほうちゃは台湾語でとても美味しいの意味です。
※本ブログの登場人物は基本的にすべて仮名を使用させていただいております。

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